SPECIAL FEATURE
今や私たちの生活に欠かせない「カフェ」という空間。コーヒーを片手に、ちょっとひと息。お気に入りのカフェで過ごす時間は、なんとも言えない心地よさがある。そんなカフェだが、実は何百年もの歴史を持つ一つの文化ということをご存知だろうか。カフェの歴史には、単なる飲食文化の発展だけではなく、時に政治や宗教の議論が交わされ、社会運動や情報交換、芸術の創造的活動の場にもなっていた。ヨーロッパでは1645年頃にヴェネツィアで初のカフェが開業し、ロンドンでは「ペニー・ユニバーシティ」と呼ばれる知の交流の場へと発展。日本では元禄時代にコーヒーが伝わり、1888年には東京・上野に最初のカフェ「可否茶館」が開業した。オスマン帝国からパリの文芸サロン、現代のコワーキングカフェまで、世界の変化が映し出されたカフェは「社会を映す鏡」とも言われている。なぜ人はカフェに集まり、何を求めたのか、カフェという空間が果たしてきた社会的・文化的役割を、歴史の流れとともにご紹介します。
Category : 教育
Date : 2025.10.21
https://history.jcs-coffee.org/
コーヒーの起源にはいくつもの伝説があるが、9世紀のエチオピアで山羊飼いの少年カルディが、ヤギが赤い実(コーヒーの実)を食べて興奮しているのを発見したことから始まる。これを聞いたイスラム教徒の修道士たちは、この実を食べたおかげで夜の儀式も眠れずに乗り切れたという逸話が残っている。コーヒーを飲み物として常用し始めたのは、アラビア半島の南端のアデン付近で、15世紀半ばにエチオピアから持ち込まれたとされており、イスラム法学者(ムフティー)は、コーヒーの薬効と覚醒作用を知り、これがイスラム宗教界にも飲用が広がったと言われている。1517年、オスマン帝国のセリム1世は、エジプトのカイロを制圧し、コンスタンティノーブル(現在のイスタンブール)にもたらす。これがコーヒーを飲むための専門店となり、イスラム世界でコーヒーハウス「カフェハネ」が誕生した。そこでは政治や思想が語られ、人々が知を交わす新しい公共空間が生まれた。
信仰を支えた覚醒の実は、やがて人と人をつなぐ文化の象徴となり、コーヒーとともに生まれた「カフェ」という空間は、いまも私たちの暮らしの中で、創造と対話の時間を紡ぎ続けている。
カフェが初めてヨーロッパに登場したのは、東方との貿易が盛んだったイタリア・ヴェネツィア。1645年頃、ヨーロッパ初のコーヒーハウスが開かれた。コーヒーは当初、「東洋の奇妙な飲み物」として一部に敬遠されることもあったが、やがてその覚醒作用や社交性が注目され、各国に広まっていく。ロンドンでは1652年に最初のコーヒーハウスが誕生し、瞬く間に数百軒にまで増加。これらの空間は「ペニー・ユニバーシティ(1ペニーで大学のように学べる)」と呼ばれるほど、知識と情報が集まる場となった。新聞や政治パンフレットが自由に読まれ、市民が平等に意見を交わすその様子は、まさに近代的な「公共空間」の始まりだった。ヨーロッパにおけるカフェは、単なる飲食店ではなく、知と芸術と自由の交差点として社会の中に根付いていく。日本におけるコーヒー文化の始まりは、元禄時代(1700年前後)、唯一の海外貿易窓口だった長崎・出島にオランダ人がコーヒーを伝えたことにさかのぼる。
現代のカフェは、私たちの日常に深く溶け込んでいる。朝の一杯で始まる日常、仲間との語らい、ひとりの時間に浸る場、あるいは仕事や学びの空間として──その使い方は実に多様だ。世界中どこを訪れても、コーヒーの香りと共に人々が集う風景がある。そこには、文化や言語、ライフスタイルの違いを超えて、誰もがくつろげる「居場所」としての普遍性が息づいている。街角のチェーン店から個人経営のロースタリー、書店併設のブックカフェやペットと過ごせる空間まで、カフェは形を変えながらも、人と人、人と街をつなぎ続けている。かつて思想が生まれ、芸術が語られたその場は、今も静かに、私たちの暮らしと心を支えている。
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