貨幣ニューノーマル

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貨幣ニューノーマル

あつ森(あつまれどうぶつの森)のベル、ドラクエ(ドラゴンクエスト)のゴールド、FF(ファイナルファンタジー)のギル。RPGの世界で薬草やポーション、服や家具を買う際に欠かせない貨幣は、世界観の創出に欠かせない。ヒトは、かつて巨石、貝殻、ナイフを模した刀銭(とうせん)などを貨幣として流通させてきた。世界最古の金属貨幣は、紀元前670年頃にアナトリア半島(現在のトルコの一部)で発明された「エレクトロン貨(electron coins:金と銀の合金)」とされ、紙幣では中国の北宋時代(960年~1127年頃)に作られた「交子(こうし)」とされる。
日本では、7世紀後半に中国の銭貨を手本にした「富夲銭(ふほんせん)」が初めてつくられた金属の銭貨(せんか)とされる。また、和銅元年(708年)には、武蔵国秩父郡(現・埼玉県秩父市)から自然銅が発見され、「和同開珎(わどうかいちん(ほう))」を鋳造。明治12(1879)年、お札用紙の原料に、古くから和紙の原料として使われた「みつまた」や「アバカ(マニラ麻)」などが採用され、現在まで伝統が受け継がれている。普段何気なく使っている日本のお札は、正式には「日本銀行券」という。2024年7月、日本では20年ぶりに紙幣が刷新され、一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎の肖像デザインが採用された。

Category : 歴史

Date : 2024.05.01

古代から続く交換手段とシンボル

物々交換が一般的な交易方法だった人間社会では、取引相手が常に一致する価値観を持っているわけではないため、一般的に受け入れられる共通の交換手段が必要だった。このとき、貝殻や巨石などは、地域によっては非常に希少で、また貝殻は美しい形状に加工しやすく比較的耐久性があり、容易に破壊されないため、共通の交換媒体として好まれた。
貨幣は文化、歴史、技術と結びついてきた。240ペンス=20シリング=1ポンドだった1971年2月14日以前の英国では、1971年2月15日にデザインが変更されるまで、1ペニー(Penny、複数:ペンス(Pence))コインは、240年以上も同じデザインが使われた。米国の1ドル紙幣の裏面には、多くの隠れたシンボルが含まれるが、特に、ピラミッドの上にある目は「プロビデンスの目」と呼ばれ、フリーメイソンの影響を示すとされる。単一の管理者を持たない分散型のデジタル通貨「ビットコイン」は、2008年、謎の人物「サトシ・ナカモト」によって生み出された。

経済学者の洞察力と先駆力

貨幣と経済学者の関係は密接。貨幣が経済に及ぼす影響や貨幣の役割について研究し、理論を構築する。アダム・スミス、ミルトン・フリードマンなどは、経済学の基本理論を構築し、新しい視点をもたらした。貨幣経済を提唱した経済学者では、「ケインズ経済学」の創設者、英国のジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)が知られる。
経済学者は、政府や国際機関に対して経済政策の助言を行い、国や地域の経済成長、貧困削減、雇用創出などに貢献する。量的緩和(QE:Quantitative Easing)を提唱した経済学者では、2006年から2014年まで、米国中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)の議長を務め、リーマン・ショック後にゼロ金利政策とQEを採用したベン・バーナンキ(Ben Bernanke)が知られる。量的緩和を通じて長期金利を引き下げ、金融市場に流動性を提供することで、景気刺激とインフレーションの促進を図ることができると主張。日本銀行は、東日本大震災(2011年3月11日)後の2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入。2016年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、2016年7月には「金融緩和の強化」を行った。

江戸時代の三貨体制と藩札の役割

経済と社会が安定した日本の江戸時代(1603-1868)は、貨幣制度も独自の進化を遂げ、金、銀、銅の3つの貨幣を使い分ける三貨制度だった。高額貨幣の「小判」や「一分金」、主に大阪を中心とした商取引で使用された「丁銀」や「豆板銀」、銅貨「寛永通宝」は日常的な小額の取引に用いられ、庶民の生活で広く使用された。
貨幣の製造と流通は幕府の管理下にあり、各貨幣には幕府の承認を示す刻印があり、幕府は貨幣制度を通じて経済のコントロールをはかった。金貨は江戸を中心とした東日本、銀貨は大阪を中心とした西日本で主に使用され、地域ごとの使い分けは、商取引の方法や経済文化に影響を与えた。
幕府によって発行される貨幣とは別に、各藩でも独自に貨幣を発行することがあり、藩札(はんさつ)や領内通用貨幣は、地域経済を支えた一方で、貨幣制度の不安定さや藩の財政問題も示し、藩札の価値は、藩の信用や財政状況によって変動した。
江戸時代の後期には、幕府の財政難や経済の変化により、度重なる貨幣改鋳や貨幣価値の下落などがあり、経済に不安定さがもたらされた。幕末の混乱期には、問題が顕在化し、貨幣制度の改革や新たな貨幣の導入が試みられた。

基軸通貨の変遷とユニークな経済指標

現在、国際貿易や金融の中心として、最も広く使われている基軸通貨は、米ドル。16世紀から17世紀初頭にかけては、スペインとポルトガルの植民地拡大により、スペインの「ピース・オブ・エイト(Piece of Eight)」や、ポルトガルの「クルザード(Cruzado)」などの金貨と銀貨が基軸通貨として流通。また、17世紀に経済的な繁栄を享受したオランダのギルダーが、国際取引や金融で広く使われた。19世紀から20世紀初頭には、産業革命と大英帝国の拡大で、経済的に大きな影響力を持つ英国のポンドが国際貿易や金融で広く使われ、ロンドンは国際金融の中心地だった。最近では、1999年に欧州連合の共通通貨として導入されたユーロは、ドルに次ぐ基軸通貨として成長。脱米ドルの動きでは、「BRICS+」の新通貨「R5/R5+」構想も現実味を帯びてきた。
ユニークな経済指標(Economic Indicators)では、一部の国や地域でビールやエビなどの消費量や販売量が経済の景気や健全性を示す指標として利用される。なかでも世界中で販売されるハンバーガー「ビッグマック指数(big mac index)」は、英国の経済専門誌「エコノミスト」によって1986年9月に考案されて以来、各国の通貨の購買力平価を推定する指標として有名。最近では、経済的繁栄だけでなく、社会的・環境的な要因も考慮して、住民の幸福や満足度を推定する「幸福度指数」も併用される例が増える。

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