マクロ写真を専門とする有名なドイツ人写真家のフランク・フォックス

SPECIAL FEATURE

顕微鏡見つけた 自分探し
‐ミクロ世界が明かす秩序と内省‐

顕微鏡は科学研究に不可欠。細菌、ウイルス、細胞構造、分子などの観察により、新たな知識や発見が得られ、医療、バイオテクノロジー、材料科学などの分野を大きく進展させ、病気の原因解明や新薬の開発など、具体的な問題を解決する。
ヒトは本質的に未知のものに対する好奇心があり、肉眼では見えない微小な世界を発見でき、その過程自体が興奮や興味を引く。「興奮」「興味」「喜び」の感情が学習中の記憶力を向上させるという研究結果もあり、顕微鏡は教育において非常に重要な役割を果たす。
1590年頃、オランダの眼鏡職人だったハンス・ヤンセンとツァハリアス・ヤンセンの父子が、2枚の凸レンズを取り付け、小さなものを観察したことが顕微鏡の始まりといわれる。以降、科学者たちは、光学顕微鏡から電子顕微鏡、そして超解像顕微鏡へと技術を発展させ、小さいものを見ることに情熱を注ぐ。
顕微鏡が映し出した秩序や構造は、科学的発見と応用にとどまらず、哲学や心理学の分野でも生命や物質の基本的な存在についての深い問いに繋がり、哲学的な探求の対象となった。

Category : 科学

Date : 2024.05.29

イメージング技術で隠された真実を見抜く

マクロ写真を専門とするドイツ人写真家のフランク・フォックス(Frank Fox)は、大学で修学した専門分野は電気工学だったが、専門家の指導と独学でマクロ写真のスキルを習得。デジタル一眼レフカメラ、Zeiss Jena Jenaval、Nikon Microphot FXAなどの特殊な顕微鏡機器を使用して、自然光から直線偏光を取り出すポラライザ(Polarizer)で、自然光を異なる2本の光線に分け、観察対象を透過させる際に位相差を生じた光を干渉させてコントラストをつける手法(微分干渉コントラスト:differential interference contrast)や偏斜照明を利用して、通常の照明条件下では良好なイメージングが難しい標本のコントラストを強調する手法(暗視野観察:darkfield microscopy)などのイメージング技術を駆使して、微小生命の美しさと複雑さを明らかにする鮮明な作品を作り出す。フランク・フォックスの写真と動画は、多くの展示会や出版物で紹介され、科学教育と自然科学の理解に貢献。

いかにして小さいものを見るか

2014年、細胞内の生命現象を見る超高解像度の蛍光顕微鏡の開発で、米国のエリック・ベッツィヒ(Eric Betzig:1960年生)、ドイツのステファン・ヘル(Stefan W. Hell:1962年生)、米国のウィリアム・モーナー(William E. Moerner:1953年生)の3博士にノーベル化学賞が授与された。ヘルはSTED顕微鏡、ベツィグはPALM(Photoactivated Localization Microscopy)という超解像顕微鏡技術を開発し、モーナーは、発光のオンとオフを制御できる光活性化型の蛍光タンパク質(光源)を発見し、PALMを具現化。アッベの回折限界を突破して、見えなかったものを見えるようにしてみせた。
非常に高い解像度を持つ単一レンズ顕微鏡を用いて、細菌、精子、血液細胞などの微生物の観察に成功したアントニ・ファン・レーウェンフック(1632-1723)、細胞壁を観察し、「細胞(cell)」という用語を初めて使用したロバート・フック(1635-1703)、透過型電子顕微鏡(TEM)を発明し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)も開発したエルンスト・ルスカ(1906-1988)。科学者たちは、それぞれの時代において、対物レンズとコンデンサー(集光レンズ)の組み合せを工夫して、回折限界に挑戦し、いかに小さいものを見ることができるかに情熱を注いだ。

顕微鏡が明かした秩序と内省

顕微鏡が映し出した秩序や構造は、科学的発見と応用にとどまらず、哲学や心理学の分野でも生命や物質の基本的な存在についての深い問いに繋がり、哲学的な探求の対象となった。「秩序(Order)」と「内省(Introspection)」は、相互に関連し合い、互いを強化する関係。
秩序は、個人の生活、社会、自然界など、あらゆるレベルで見られる現象で、内省は、自分自身の思考や感情、行動を振り返り、自己を理解しようとする行為を指し、自己認識や自己成長において重要な役割を果たす。
「秒速5センチメートル(新海誠監督)」、「新世紀エヴァンゲリオン(庵野秀明監督)」、「ノルウェイの森(村上春樹著)」など、アニメや小説で「自分探し」をテーマにした作品は多く、見えないものの発見と細部への焦点を通じて、自己探求と成長という普遍的なテーマを描く。

【動画】顕微鏡動画が育む教育への多面貢献

顕微鏡で撮影された動画は、動的なプロセスの詳細な観察、データの再現性、時間経過による変化の追跡など、科学研究において非常に有益。また、医療分野では診断精度や治療のサポートに貢献し、産業分野では品質管理や新材料研究に役立つ。
学校教育面に目を向ければ、学習指導要綱における顕微鏡の使用目的は、科学的探究心の育成、観察技術の向上、生物学や物質の微細構造への理解を深めることにあり、動画を用いることで、時間経過による変化の追跡を直感的に学習でき、視覚的な学習効果の向上が期待できる。
顕微鏡観察を通じて、学科間での階層性ではなく相互作用を重視したインターディシプリナリーな学習が期待でき、異なる科学分野の知識習得に加え、観察結果をもとに問題を解決する方法を学び、科学的な問題解決能力を育成する。

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