SPECIAL FEATURE
困難に直面したとき、人が人を支える行為は、人間にとって根源的な営みである。古代から文化ごとに形を変え、制度として発展してきたこの支え合いはいま、少子高齢化という社会構造の変化に加え、介護ロボットや人工知能(AI)といった先端技術の急速な進展に直面している。これらの技術は介護や支援の形を大きく変えつつあるが、一方で人間らしさや倫理をどう守るかという新たな課題も生まれている。「人が人を支えること」の意味と価値が改めて問われる中、写真を通して、その歴史的な広がりとこれからの姿を考える。
Category : 歴史
Date : 2025.07.01
病や貧困に苦しむ人々を支える営みは古代から続いているが、当時は現代のような制度ではなく、宗教や共同体、権力と深く結びついた形で行われていた。古代ギリシャでは病が神々の罰と考えられ、治癒は神殿での祈りに委ねられていた。ローマにおいては健康が国家秩序の一部とされ、兵士や市民に一定の医療体制が整えられていた。中世ヨーロッパではキリスト教の教えのもと、教会や修道院が病者や貧者の世話を担い、信仰と援助が密接に結びついていた。またイスラム圏では寄進制度である「ワクフ」により、医療や慈善、学びを兼ね備えた施設が設けられ、東アジアの仏教世界では病が過去の業とされながらも、布施や看護が善行とされ、弱者への支援が人々の生き方となっていた。このように宗教や道徳に根ざした助け合いの営みは、現代の福祉制度の礎となっている。
近代ヨーロッパにおいては、啓蒙思想や産業革命を背景に福祉や医療が制度として整備されていった。イギリスの救貧法では、貧困者に最低限の生活を保障しつつ労働を義務づけるワークハウス制度が設けられた。一方で、都市化に伴う感染症の拡大が社会問題となり、1848年の公衆衛生法やジョン・スノウの疫学的調査が公衆衛生政策の先駆けとなった。看護師の教育制度化や医療職の専門化も進み、ナイチンゲールの改革により医療の援助は訓練された専門職の領域へと移行した。1880年代にはドイツで世界初の社会保険制度が導入され、国家が生活を保障する福祉国家モデルが誕生した。こうして福祉と医療は初めて国家の責任として体系化されたのである。
20世紀以降、福祉は国境を越えて広がり、グローバルな課題となっている。戦後は北欧やイギリスなどで福祉国家が成立し、日本でも2000年に介護保険制度が導入された。一方、少子高齢化が進むなか、フィリピンやインドネシアなどからの移民労働者が介護現場を支える「国際的な介護労働の連鎖」も形成されている。フェミニズムの視点からは、「介護は女性の役割」という固定観念が問い直され、「介護倫理」が社会のあり方を見直す重要な視点として注目されている。また、介護ロボットや人工知能などの技術革新は介護のあり方を変えつつあるが、その一方で人間性や倫理をどう守るかという新たな課題も浮上している。介護の未来を考えることは、「私たちはどう共に生きるのか」を問い直すことであり、福祉とは単なる制度を超えた文化であり、社会のあり方そのものである。
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