発明
人類の未来を形作る創造力

先史時代、火打ち石で火を起こす男。人工的に火を起こす起源となるが、石と石を打ち付ける発想自体が奇跡のように思える

イギリス、エセックス州発掘の、紀元前2700年から1800年頃の打製石器（右側）と磨製石器（中央から左側）。打ち壊して刃をつくる打製石器から磨いて形を整えるという進化を遂げている道具である

キャンプなどで使う着火剤。火の起こし方の原理は先史時代から何ら変わりない。

中国の製紙業者、蔡倫（57-121）が作業員を監督している。蔡倫は中国の宦官で、今日の製紙工程と基本的に同じ製紙工程を発明したとされている。樹皮、麻、またはぼろ布を煮沸し、叩いてパルプ状にする（背景右）。葦を束ねた木枠をパルプに浸し、振って繊維を揃える。最後にパルプを天日で乾燥させ、漂白した後、葦から剥がす（前景）。この技術は中東、そしてスペインを経て西ヨーロッパに伝わった。

楔形文字（くさびがたもじ）は、今から約5000年前のメソポタミアでシュメール人が発明した世界最古の文字システムである。象形文字の体系として始まった楔形文字は、3000年の間に絵文字の表現が簡略化され、より抽象化されていった

ヴィクトル・ヴァスネツォフ作「 石器時代、饗宴 」（1883年）、ロシア国立トレチャコフ美術館所蔵。火はものを焼く、体を温めるものとして人類の生活に大きな進歩をもたらしたが、火を見ると興奮する、盛り上がる、は現代も共通している

世界最古の鋳造貨幣といわれているリディア・エレクトラム貨（両面）。この貨幣は、紀元前600年から575年頃、小アジア・リディア（現在のトルコ）のサルディスでアリアテス王によって鋳造されたと考えられる。当初は重量によって価値が決まる「秤量貨幣」の段階だったが、重量を均一化した鋳造貨幣として発明され、交易の利便性を大いに高めた

車輪を描いた最古の浮彫の一つ。1928年に古代メソポタミア（現在のイラク）のウル王墓で発見された多数の石棺彫刻の一つで、紀元前4000年に遡ると考えられている。現代のタイヤの起源はここにある

カラカラ浴場の想像図。ローマで最大規模の浴場の一つである。水浴びから温浴への移行もさることながら単なる浴場ではなく、運動場や図書室、庭園などが併設された一大娯楽施設であった。水道技術や暖房システムなど、高度な土木・建築技術が用いられていた

オレゴン大学自然文化史博物館に展示されている約8000年前のセージブラシ樹皮のサンダル。最古のサンダルといわれており、現在の靴の発明の起源といえるだろう。オレゴン州といえば、某有名靴メーカーの本社があるが偶然か？

アメリカの発明家トーマス・エジソン（1847-1931）によって1879年に設計された最初の電球。炭素フィラメントを密閉されたガラス球の中に封入したものだった。これに電流を流すことでフィラメントは加熱され、明るく光るようになった。このフィラメントの素材は、最終的に耐久性に優れた日本の「八幡竹」を採用している

トーマス・エジソンは映画にも貢献している。彼が設計した映画スタジオ「ブラック・マリア」の外観。建物の屋根は開閉可能で、全長10メートルの建物全体を回転させて当時の映画撮影に必要な最適な日光を取り込むことができた。1890年撮影。

ガリレオ・ガリレイの望遠鏡（1610年）：フィレンツェ、ガリレオ博物館蔵。木、革、ガラスで出来ており、長さ92cm、直径6cm。現存するガリレオのオリジナル望遠鏡2台のうちの1台の写真である。 ガリレオは望遠鏡をもっとも早くから取り入れた一人で、1608年に望遠鏡の発明特許について知ると、1609年に1日で10倍の望遠鏡を作成し、さらに20倍のものに作り変えた。

1903年12月17日、ライト兄弟はノースカロライナ州キティホークで、動力付き飛行機「ライトフライヤー号」による世界初の有人動力飛行に成功した。その歴史的瞬間を捉えた写真である。彼らは自転車屋を営みながら動力飛行機を発明した

1837年にサミュエル・F・B・モールスが発明した実験用電信機の図。モールス電信機として知られるこの装置は、通信技術の歴史において極めて重要な役割を果たした。この図は初期の電信システムの精巧な設計と構成部品を示しており、モールスが長距離通信に用いた革新的なアプローチを物語っている

イギリス、バローの製鉄所を描いたイラスト、1880年頃。イラストには蒸気機関車が走っている様子が描かれている。蒸気機関車の発明により、物の運搬手段が劇的に変化。社会構造が農業中心から工業中心に変わる産業革命の一翼を担ったともいえる

活版印刷を発明したヨハネス・グーテンベルク（右中央）が自身の印刷機（左）で印刷された活字を検査している様子を描いている。彼の発明した活版印刷機は、書物を大量生産できるようにしたことで、情報や学問の普及に大きく貢献した。書物は限られた人々だけのものからあらゆる人々に広がり、ルネサンスや宗教改革、科学革命などに大きな影響を与えた

「ノーベル賞」を創設したアルフレッド・ノーベルもまた発明家である。彼は危険なニトログリセリンを扱いやすくした形の爆薬、いわゆるダイナマイトを発明し、工事現場などで飛躍的に作業効率を高めた。その一方で、爆薬が戦争にも使われることを憂い、平和や学術の発展に貢献する賞を設けたと言われている

ベンジャミン・フランクリン。アメリカ合衆国の政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者。印刷業で成功を収めた後、政界に進出しアメリカ独立に多大な貢献をした。凧を用いた実験で雷が電気であることを証明した人物で、避雷針や遠近両用眼鏡なども発明している。現行の米100ドル紙幣に肖像が描かれているなど、アメリカ合衆国建国の父の一人として讃えられる

「必要は発明の母」という言葉はトーマス・エジソンの言葉だと思われがちだが、英語のことわざで、ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』の中に登場する「Necessity is the mother of invention」という表現の訳で、ここが出所とされている

1932年、ヴェルサイユで開催された発明博覧会のポスター。第30回レピーヌ・コンクール

「スマートフォンを使う先史時代の部族」。現代社会では誰もが持っている発明品だが、もし先史時代にあったら世界はどうなっていたのだろうか（画像はイメージ）

ティム・バーナーズ＝リー。イギリスの物理学者でありコンピュータ科学者で、1991年にワールド・ワイド・ウェブを発明した人物である。HTTPやHTMLの開発など現在のウェブ環境の基本構造を考案した

ベルリン・ブランデンブルクにあるテスラの巨大な生産ライン。人間の知によって発明されたロボットがプログラミングとおりに作業をおこなう。2023年

定期運行中の自動運転電気バス（中）と通常の有人バス（右）。蒸気から始まりガソリンなどの燃料から蓄電池へ、友人運転から無人運転へ、発明がもたらす技術革新である。2020年ドイツ

ブンデスリーガのSVヴェルダー・ブレーメンのスタジアム。屋根には大量の太陽光発電パネルが取り付けられ自家発電をおこなっている。観客の熱量が発電につながる発明もそう遠くはないのでは？

ドイツの物理学者であるヴィルヘルム・レントゲンが1895年にX線の発見してから今日に至るまで医療は進歩し続けている。手術支援ロボット「ダヴィンチ」。患者に触れず、医師が患部の立体画像を見ながら遠隔操作でアームを動かし手術を行うことが可能となる。2023年ドイツ

即席麵は世界で愛される食の身近な発明品である。フリーズドライの技術も活かされている

ボールペンのペン先のカラー走査型電子顕微鏡写真（SEM）。ボールペンは内部に粘性のあるインクが充填されており、使用時には小さな金属球（灰色）の転がりによって先端からインクが出る仕組み。ボールペンは1938年にハンガリーのジャーナリスト、ラズロ・ビロ（1899-1985）によって発明された

人類は知恵をつけ始めると進化を求めるが、時には楽さ、快適さを求め発明する。ロンドンの地下鉄、エリザベス線のエスカレーター

連日高値を更新し続けるビットコイン。仮想通貨、暗号資産などで、物理的な取引では無く電子的な取引となり、現代社会を象徴するようなものとなっている（画像はイメージ）

培養肉。賛否両論だが、動物から採取した細胞を研究室や工場で培養して作られる食肉のことで、従来の畜産に代わる代替肉の一種である。家畜を飼育する必要がなく、土地、水、飼料を大幅に削減できるため、環境負荷の低減や食料問題の解決に貢献するとともに、動物へのストレス削減といったアニマルウェルフェアにもつながる