空中写真と情報科学

1858年10月23日、フランスの写真家ナダール（Nadar）が、パリ西部クラマールで、気球から世界初の空中撮影を行った。気球から撮影するナダールを描いたドーミエの風刺画「写真を芸術の高みに浮上させようとするナダール(Nadar, elevant la photographie a la hauteur de l'Art)」

関東大震災後の日本橋空撮。撮影日は1923年9月5日。1923年9月1日11時58分32秒に発生した関東大地震は、マグニチュード7.9、死者・行方不明者は10万5,000人と推定される。

歌川広重（1797-1858）が、にわか雨の日本橋を描いた浮世絵。傘をさして歩く人々、川沿いに立ち並ぶ家々、遠方に富士山が描かれる。東海道などの距離は、日本橋から測定された。現在でも伝統は受け継がれ、日本橋に「日本国道元標」があり、国道や府県道などの起点。

葛飾北斎のカラー木版画「東海道名所一覧（1813 - 1823）」。日本橋から京都までの東海道の各宿場や名所を、鳥瞰図法で描いた作品。右下に江戸、右上に京都、左上に富士山が描かれる。

浅草の金龍山寺、1817～58年頃（カラー木版画）

1929年、米国MGM（Metro-Goldwyn-Mayer）スタジオで、熱気球から映画を撮影する様子。

1917年から1918年にかけて撮影された、第一次世界大戦中（1914 - 1918）にGraflexカメラを使用して航空測量を行う飛行士。西部戦線での塹壕戦の膠着状態が続く中、航空機の主な用途のひとつは、敵を空中から偵察・撮影することだった。米イーストマン・コダック社が製造したGraflexカメラが使用された。

1944年、第二次世界大戦でマーティンB-26爆撃機に搭乗した写真家が、欧州の目標地域に向かう途中で、K-20カメラの機能をチェック。

19世紀、カメラを取り付けた凧で空中写真が撮影された。鳥の目線で見た景色を捉えようと、現在でも根強い人気がある。

ユネスコの世界遺産に登録されているハンガリーで唯一の村、ホッローコにあるエゲル城跡の空撮。13世紀に建てられ、1552年にオスマン帝国のスレイマン1世が、15万人の軍隊でハンガリーに再侵攻した際、唯一エゲル城が持ちこたえた「エゲル包囲戦」で有名な観光名所。

打ち上げ花火の打ち上げる高さは、3号玉で120メートル、10号玉で300メートルくらいといわれ、ドローンで3号玉花火が開く瞬間を撮影可能。3号玉の開いた花火の直径は約60メートル。画像はイギリスの南ウェールズでの花火の空撮

ドローンで空中撮影しながら、コンバイン収穫機を遠隔操作する先進的な農業。

空中写真から自動化と遠隔無線制御が進む建設現場。空中写真の上に重ねて表示するさまざまなデータがあり、GIS（地理情報システム）で扱うデータは、地図データと統計的なデータの2つに大別でき、総称して「空間データ」と呼ばれる。

火星地表で発生した北極崖の“雪崩”。ちりと二酸化炭素の霜からなる地表の一部が剥がれ、雪崩を引き起こしている。2010年1月27日に火星偵察オービタープローブに搭載されたHIRISEカメラによって撮影された写真。高さ数十メートルに達しており、主に二酸化炭素の霜が雪崩または落下した結果と目される。崖の高さは約700メートル。

4,000メートルの氷の下にある南極大陸のボストーク湖は、目視では観測できない氷底湖。1960年代に、アイスレーダー（氷透過レーダー）機器を搭載した航空機を用いた空中写真調査によって、その存在が初めて確認された。表面積は約1万4,000平方キロメートル、体積は約5,400立方キロメートル、深さは400～800メートルで、水が湖を循環するには、5万5,000年から11万年かかる。

2011年3月11日、東日本大震災発生後、約20時間で津波が太平洋全体に拡がった。波の高さは低い(黄色)から高い(紫/黒)まで色分けされている。衛星で撮影したデータと潮位計からのデータを基に、米国海洋大気局（NOAA）の太平洋津波警報センターによって作成された。

北西太平洋と東アジアの地形。海面下のプレート境界がはっきりとわかる。この地図は、ETOPO-1のデータセットを使用して、米国海洋大気局（NOAA）の米国地球物理データセンター（National Geophysical Data Center）によって作成された。

スペースシャトル・エンデバーに搭載されたSAR（Synthetic Aperture Radar：合成開口レーダー）で撮影されたアフリカのチャド北部サハラ砂漠では、数億年前の小惑星または彗星の衝突によってできた直径約17キロメートルのクレーターの可能性が発見された。1994年4月18日と19日に撮影された。

GIS（地理情報システム）を初等中等教育分野における学習活動利用が進む。たとえば港に停泊している船舶の空中写真から、鉄鉱石の輸出と貿易トレンドを把握する。写真はオーストラリアのポートヘッドランド港。

桜島の空撮。1914（大正3）年に桜島が大噴火したとき、当時の陸軍測量部の人たちが、流れ出る溶岩のために近寄れず、遠方から写真を撮影し、地図を作ったのが、日本の写真測量のはじまりとされる。この大正の大爆発で、島だった桜島は、溶岩によって海峡が埋めたてられ、大隅半島と陸続きになった。

1969年に建設されたオーストリアの常設サーキット、オステルライヒリンク（Oesterreichring）。空中写真からコースレイアウトが検討された。F1オーストリアGPでは、平均速度が250キロを超える高速サーキットとして知られ、1997年の改修によりA1リンク（A1-Ring）へ改称、2010年にレッドブル・リンクと改称され現在に至る。海抜700mの場所にあり、空気の薄さがエンジンに影響をあたえることもある。

アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山は、2010年3月と4月に氷河の下で大噴火し、火山灰でヨーロッパの空域の大部分が数日間閉鎖された。2010年3月25日の噴火が赤、2010年4月16日の噴火が緑、最初の噴火場所が水色。SAR（合成開口レーダー）を使用し、ヨーロッパの衛星TerraSAR-Xによって撮影された。

2023年2月6日、トルコ南部で発生した大地震の被害地図。赤色は、建物やインフラストラクチャに深刻な被害が出ている可能性が高い地域、オレンジ色は中程度の被害、黄色は部分的な損傷の可能性が高い地域を示す。2回の大きな地震が発生し、最初はマグニチュード7.8で、9時間後の2回目のマグニチュードは7.5。多くの人命が失われて、500万人以上が家を追われている。

画像の右側にある白と青の領域は、グリーンランドの氷冠の一部で、北半球で最大の浮遊氷河。赤みを帯びたピーターマン氷河は、2008年7月10日から25日間に氷が融けて29平方キロを失った。SAR（開口合成レーダー）によって撮影された3つの画像から作成された。

視野の狭い者は、いくら集まったところで、本質を理解することは難しいという成句「群盲象を評す」は、複数の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、というインド発祥の寓話。インドから世界中に流布し、日本の江戸中期（元禄期）の画家、英 一蝶（はなぶさ いっちょう：1652-1724）は、浮世絵「群盲撫象図」を描いた。