SPECIAL FEATURE

ガウディの140年の夢が、いま叶う
—サグラダ・ファミリア完工へ

2026年は「ガウディの年」として注目されている。主な理由は、ガウディの代表作であるサグラダ・ファミリア(聖家族教会)が完成予定とされているからである。また、ガウディは1926年に亡くなっており、2026年は没後100年という節目の年でもある。ガウディの建築は、自然界に見られる構造や形態、調和を取り入れた独自のスタイルを持ち、有機的建築(オーガニック建築)の代表例とされ、建築史において特異な存在感を放っている。一方、現代の建築界では、環境への配慮やサステナビリティへの関心が高まっている。こうした潮流の中で、有機的建築の思想は再評価されており、自然との共生を志向するデザインや、再生可能エネルギーの活用、地域素材を取り入れた建築などに受け継がれている。ガウディの遺産は、単なる歴史的建築ではなく、環境と人間の未来をつなぐヒントとしても、現代の建築に新たな視点を与え続けている。

Category : 文化

Date : 2025.06.18

参考文献

しあわせ気分のスペイン語 2024年 10月号 ~ 2025年 3月号(連載「ガウディの名作建築を見る」山村健/NHK出版)
ぜんぶわかる世界遺産<上> ヨーロッパ/アフリカ(成美堂出版編集部 /成美堂出版)

サグラダ・ファミリアの構想と進化 神への建築

サグラダ・ファミリアは、スペイン・カタルーニャ州バルセロナにあるカトリック教会で、建築家アントニ・ガウディによって設計された。1882年に着工し、現在も建設が続いている「未完の大聖堂」として世界的に知られている。この教会は、キリスト教における聖家族(イエス・キリスト、聖母マリア、聖ヨセフ)を讃える目的で建てられ、その名の通り「聖家族教会」と呼ばれている。ガウディの宗教的な情熱と自然への深い観察が建築全体に反映されており、その構造や装飾の一つひとつが信仰の表現となっている。
ファサード(正面や側面)、塔、窓、柱などには有機的な曲線が多用されており、ガウディはこの聖堂を「森の中の礼拝堂」のような空間として構想した。自然を模倣するのではなく、幾何学的な構造を通じて再解釈することで、建築としての“森”を形づくったのである。なお、ガウディの生前に完成していたのは、地下聖堂と東側の「キリスト降誕のファサード」のみである。2010年、ローマ教皇ベネディクト16世により、サグラダ・ファミリアは「バシリカ」に認定された。これは、特別な宗教的・歴史的・文化的価値を持つ教会堂に与えられる称号であり、未完成のまま認定されたことは極めて異例である。ガウディがこの建築に込めた信仰と芸術への情熱が、約100年後に教皇によって正式に承認されたことは、彼の理念がカトリック教会に受け入れられた象徴的な出来事といえる。

想像力が街を変えた 彩る最傑作

26歳で建築士の資格を取得したガウディは、有機的な自然の造形から着想を得て、次々とバルセロナの街を独創的な建築で彩っていった。サグラダ・ファミリアを含む建築物は、「アントニ・ガウディの作品群」としてユネスコの世界遺産に登録されている(1984年に一部先行登録、2005年に拡大登録)。この作品群は、ガウディによって設計された7つの代表的建築を指し、単なる建物の集合ではなく、彼の建築思想や芸術的ビジョンを総合的に体現する重要な文化遺産とされている。実業家エウゼビ・グエルとの友情から生まれた「グエル邸」や「グエル公園」、実業家ペレ・ミラの邸宅として建てられた「カサ・ミラ」などに見られる、曲線を多用した造形は、自然を教師としたガウディの真骨頂といえる。「カサ・ミラ」においては、そのあまりにも奇抜な外観から、当時の住民たちに「ラ・ペドレラ(石切場)」というあだ名で揶揄されたが、今日ではバルセロナを代表する歴史的建造物となっている。

ガウディの建築に宿る“影響の連鎖”

1852年、スペインのカタルーニャ地方に生まれたガウディは、地元の伝統や文化に深い敬意を持ち、土地・宗教・民族意識といった複雑に交錯する要素を、積極的に自身の建築に取り入れた。カタルーニャ地方の陶器、煉瓦、モザイク(トレンカディス)などを多用し、地元職人の技術を生かすことで、素材そのものにも地域性を宿らせている。ガウディは「装飾の美」を重視するアール・ヌーヴォーの影響を受けながらも、それに独自の構造的・宗教的・象徴的意味を重ね合わせ、唯一無二の建築へと昇華させた。彼はモデルニスモ(カタルーニャ版アール・ヌーヴォー)を代表する建築家の一人であり、有機的な形状、自然・宗教・幾何学への深い関心を反映させた独自の様式を築いている。その常識を打ち破る革新的な建築と思想は、20世紀以降の多くの建築家や芸術家に強い影響を与えた。たとえば「カサ・ミラ」は、世界的な近代建築運動を牽引したル・コルビュジエに称賛され、鬼才サルバドール・ダリをも魅了している。

お問い合わせ・ご相談 無料

こんな写真を探している
こんな企画があって写真を多数使用したいなど、
ご相談は無料で承っております。

TEL 03-3264-3761 mail お問い合わせフォーム
×
×CLOSE