SPECIAL FEATURE

考古学者デビュー
‐文化の線引きを描き直す‐

「事実の背後にある物語」を発見する考古学(archaeology)は、古代の文化や人類の過去の活動、遺物などを科学的に研究し、理解する学問。文字に頼らず発掘された遺物を通じて、歴史的な出来事や人類の文化、社会、技術について解明する特徴があり、人類の進化と歴史の謎に迫る。考古学の手法は、発掘した植物や動物の化石、堆積物の分析などを通じて、過去の環境変動や気候変動に関する情報を提供でき、地震痕跡の年代推定も可能だ。
日本の考古学者の養成は、主に文学部や文化人類学部で行われる一方で、欧米では理学部が主導し、自然科学に基づく手法が一般的。大英博物館では、毎週土曜日、ベテランの考古学者による、実際の展示遺物や資料を使用した、5時間半で考古学を学べる短期集中コースが用意されている。

Category : 教育

Date : 2024.01.17

参考文献

発掘を科学する(田中琢・佐原真著/岩波書店)
古代エジプトを発掘する(高宮いづみ著/岩波書店)
日本旧石器時代(芹沢長介著/岩波書店)
稲作の起源を探る(藤原宏志著/岩波書店)
考古学の散歩道(田中琢・佐原真著/岩波書店)
日本考古学協会
テュービンゲン考古学センター(TZA)
考古学と地質学間に生じた 層序認識の違いとその原因

 

科学を駆使した年代測定で時代区分を見直す

「放射線年代測定法(Radiocarbon Dating)」は、生物の死後も崩壊を続ける炭素14Cの半減期(約5,730年)を利用して、死後は変化しない炭素12Cとの比率から、試料の年代を測定する。最近では炭素14Cの原子数(崩壊によって生じる陽子数)を直接測定する「AMS法(Accelerator Mass Spectrometry)」が小さな試料でも高精度な測定を可能にした。これまでの生物分類地理学に加え、埋蔵種子分析法や植物が生産する微細なシリカ(二酸化ケイ素)の結晶ファイトリス(phytolith)が種によって異なる形状や特徴持つことに着目したプラント・オパール分析が、古代の環境や植生の変遷を理解するのに役立ってきた。また、考古遺伝学ではDNAやアイソザイム(Isozyme)を読み取ることで個体や種の違いを解明し、古代の生物の進化や種の系譜、生態などを研究している。これらの進展に基づき、教科書の縄文文化の時代区分も改訂され、水稲耕作の始まりも紀元前8世紀頃に設定された。

文化遺産の保全と観光資源開発

米国では、考古学は人類学の一部と見なされるのが主流だが、日本では歴史学の一分野として位置づけられ、発掘資料をもとにした歴史研究を行う学問として認識される。日本国内には埋蔵文化財が約46万カ所存在し、年間には7,000~8,000件の発掘調査が行われるが、そのほとんどが道路や建物の土木工事時に実施される。
一方、欧州では伝統的に「先史学(prehistoric archaeology)」と呼ばれる学問領域があり、これは歴史学や人類学とは異なり、統合された独立した学問分野として捉えられている。例えば、ドイツでは保存と活用を目的とした積極的な発掘調査が行われ、発掘された遺物や構造物から得られる情報を通じて、過去の社会や文化に対する理解が進む。また、発掘の観光資源への利活用においては、最近ではフランス、英国、米国、アラブ首長国連邦の合同発掘調査により、アラブ首長国連邦の先史時代の遺跡が多く発見され、これに伴い文化遺産の保全にとどまらず、文化遺産の観光活用に大きな注目が寄せられる。

「事実の背後にある物語」を発見する

考古学は、歴史学と同様に人類の歴史を解明する目的を持っているが、歴史学が文字による資料に依存しているのに対し、考古学は発掘された遺物(道具や食べ物など)から人々の活動を推測する特徴がある。この分野には発掘技術や現場管理、遺物の収集と分類、保存・修復技術、地理情報システム(GIS)の利用などが含まれる。
日本で考古学者を目指す場合、通常は「歴史学科」「史学科」「文化財学科」「歴史遺産学科」など、関連分野を専攻する文学部や文化人類学部が一般的。ただし、一部の大学では独立した考古学部や考古学科も設置されつつある。欧米の考古学教育では、理学部が主導し、自然科学に基づく手法を統合的に使用する学際的な組織が一般的だ。
考古学と地層学は、共に地層を扱う歴史科学の分野で、発掘調査法においては、デンマーク生まれの17世紀の科学者ニールス・ステンセンの「地層累重の法則」と、18世紀の英国の科学者ウィリアム・スミスの「地層同定の法則」が確立した「地層は重力に従って堆積するので、下にあるものほど古い」という古典的基本原理が、地層の新旧や年代判定の際に重要な基準となっている。

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