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深海フロンティア

低温・超高圧環境下の深海では、二酸化炭素は液状化する。深部では太陽光がほとんど届かないため、視界が制限される。独自に適応した深海の生態系は多様で、未知のままであることが多く、陸上の生態系の知識の限界を超えている可能性があるといわれる。一方、未解明の謎が多く残る宇宙においては、古くから探査機や望遠鏡を使用する観測手段が発達し、遠くの星や銀河を観測。探査や調査が難しいという意味で、深海は宇宙よりもたどり着くのが難しい未知の領域。科学者たちは、新たな発見と理解を深めるために継続的な研究と探索を行っている。
近年、資源の枯渇やエネルギー需要の増加などを背景に、海底に眠る豊富な天然資源への関心が高まっている。海底油田やガス田の採掘に加え、産業用鉱石や希少金属などを含むマンガンやポリメタルなどの鉱床は、重要な資源と考えられている。海底の資源開発には、採掘や掘削活動が海洋生態系に与える影響を評価し、環境保護対策を講じる必要に加え、国際連合の海洋法条約(UNCLOS)など、国際的な法規制も関わる。また海底の資源開発には高額なコストを伴う場合があり、投資収益のバランスが重要で、市場の需要と供給、採算性の評価が経済的成功を左右する。

Category : 文化

Date : 2023.08.23

全海洋の平均水深は約3,700メートル

空気の圧力を「大気圧」と呼び、海面の大気圧を1気圧としている。宇宙空間では空気を留めておくことができないので、気圧はほとんどゼロ。海中の圧力は、深さ10メートルごとに約1気圧増加するので、水深200メートルの深海では約20気圧、水深1万メートルの深海では、約1,000気圧の圧力がかかる。
水深の区分は、利用目的に応じて複数あるが、一般に水深200メートル以上を深海と定義することが多い。植物プランクトンが太陽光で光合成できる限界の深さが水深200メートルとされ、太陽光が届く限界であることも、境目の理由とされる。
水深200メートルの面積は、全海洋の約8%で、全海洋の平均水深は、約3,700メートル。仮に地球表面を平らにすると、地球は水深2,700メートルの海に覆われてしまう。
海の最深部は、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵で、水深1万920メートル。長さは約2,550キロメートル、幅は平均70キロメートルに達する。

潜水調査船が切り拓く未知の世界

火山帯の上に位置する日本では、巨大地震の震源域を実際に調査して、海溝型の巨大地震のメカニズムを解明することが重要課題。JAMSTEC(独立行政法人海洋研究開発機構)が、1990年から運航を開始した「しんかい6500」は、文字どおり水深6,500メートルまでの潜航が可能な有人潜水艦で、世界トップクラスの潜航能力があり、多くの潜航調査で成果を挙げる。2020年代後半には、「しんかい12000」の開発が構想されている。
有人深海探査の歴史を紐解けば、紀元前330年のアレキサンダー大王による潜水鐘まで遡れるが、強大な水圧と戦い、乗組員の命を守る耐圧殻の開発は日進月歩。現在では、無人で調査を行う「深海ドローン」に加え、深海で作業が行えるマニピュレータ(腕)の開発など、研究者は深海に挑み続ける。

独自の進化を遂げる深海生物ワンダーランド

熱水噴出孔(hydrothermal vent)は、地殻の亀裂から噴き出すマグマで熱せられた水のことを指す。吹き出す熱水には硫化水素やメタンなどの有毒ガスが含まれるが、噴出孔の周囲には、有毒ガスをエネルギー源として活用する微生物が存在し、「化学合成生態系」と呼ばれる特異な生態系が広がる。
深海環境は、強い圧力、暗闇、乏しい食物といった過酷な条件が支配する場所。こうした厳しい環境に適応するため、深海生物は驚くべき進化を遂げた。超高圧と低温に耐えられる強靭な体組織や骨格を発展させ、多くの種は発光(バイオルミネセンス)能力を持つ器官を発達させた。また、代謝率を低く抑えることでエネルギーを節約し、一部の種は巨大なサイズに成長し、独特な形態へと進化した。深海生物は捕獲が困難で、発見される個体の多くは既に死亡していることが多いため、その生態についてはまだ解明されていないことが多い。

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