SPECIAL FEATURE

伝承される
華麗なる新年の調べ
-ウィーン ニューイヤーコンサート-

音楽が、絵画、彫刻、文学などの芸術ジャンルと決定的に異なるのは、「再現芸術」であり、再現方法は、強く時代性を持ち、環境(演奏場所)に支配される点。なかでもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって演奏され、ウィーン楽友協会で毎年1月1日に開催される「ウィーンニューイヤーコンサート」は、芸術と音楽を愛する人々にとって、新年を迎える特別な瞬間として認識されており、多くの人々が世界中からウィーンを訪れ、この素晴らしい音楽体験を楽しんでいる。コンサート・プログラムは、12月30日、31日、1月1日と、3日間を通じて同じ内容で演奏され、なかでも元旦のプログラムは、世界の90か国以上に中継・配信され、約5,000万人が同時視聴。重要な役割を担う指揮者は、作曲家の意図を解釈し、それをオーケストラに伝えると同時に、オーケストラと観客との架け橋を担う。

Category : 文化

Date : 2023.08.02

参考文献

ウィーン・フィルの哲学 至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか(渋谷 ゆう子著/NHK出版刊)

卓越した芸術ビジョンで高い演奏効果を実現する指揮者

オーケストラの全体をまとめ、音楽の解釈や表現を統一する指揮者は、音楽の演奏において重要な役割を果たす。ウィーンニューイヤーコンサートのはじまりは、1939年12月31日の大晦日、当時ナチス・ドイツ占領下だったオーストリアで、ウィーン出身の名指揮者クレメンス・クラウスが、ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカを演奏するコンサートを開催したこととされる。2年後の第2回からは元旦の正午に開催されるようになり、1946年から正式に「ニューイヤーコンサート」と命名された。コンサートは、1979年までウィーン出身の3人の指揮者で担われていたが、1980年以降は国際化されている。1987年のヘルベルト・フォン・カラヤン以降は同じ指揮者が2年連続して指揮することはなくなり、一度選ばれると複数回招かれる傾向が強く2023年までにのべ18人の指揮者が抜擢され、2002年には小澤征爾が日本人として初めて指揮したのは有名。

伝統と文化を反映する臨場感あふれる音楽堂

クラシック音楽は、楽器の細微なニュアンスや表現を大切にするため、良好な音響設備が必要不可欠。ウィーンニューイヤーコンサートは、ウィーン フィルハーモニー管弦楽団の本拠地でもある「黄金のホール」で行われる。「黄金のホール」は、1階が約1,000席、立ち見の2階席をあわせて最大2,000席のキャパシティ。ホールの形状は、伝統的な「シューボックス型(Shoebox Shape)」で、主にウィーン楽派の音楽を演奏するために設計された。観客席の配置や傾斜、ステージの高さなどが、全席からステージを見やすくするために考慮され、長方形の広い観客席に対して、ステージがその一方に配置される形状で、音響の均一性と観客席からの音の聴こえやすさが特徴とされる。日本を代表するクラシック音楽のコンサートホール「サントリーホール(Suntory Hall)」は、世界的な音響設計家であるヤーシン・トシマルによって設計された「シューボックス型」で、「黄金のホール」がモデルと言われる。「シューボックス型」以外には、「バイン形(Vineyard Style)」、「テン・ドーム形(Tent Dome Shape)」、「アリーナ形(Arena Style)」、「ファン形(Fan Shape)」など、音響効果や観客の視界など、異なる形態を持つコンサートホールもある。

ウィーン音楽の象徴ヨハン・シュトラウス

ヨハン・シュトラウス2世(Johann Strauss II)は、19世紀のオーストリアの作曲家で、ワルツ、ポルカ、マーチなどの舞曲形式の作品が主体で、「ワルツ王」として広く知られる。父ヨハン・シュトラウス1世、次男ヨーゼフ・シュトラウス、四男エドゥアルト・シュトラウス1世も有名な音楽家で、音楽一家。シュトラウスの楽曲は、ウィーンの伝統や文化を反映し、ウィーンの音楽の象徴。魅力的なメロディが特徴的で、楽器の組み合わせやバランスが上手く取られており、オーケストラの豊かな音色と美しいハーモニーを再現。19世紀に流行した社交ダンスの音楽を広め、舞踏会などで多くの人々に親しまれた。
ニューイヤーコンサートのアンコールでは、全3曲が演奏されるのが定番で、2曲目にヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」、3曲目にはヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」が奏でられ、幕が閉じられる。

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