顕微鏡で巡るミクロの小宇宙

SPECIAL FEATURE

顕微鏡で巡るミクロの小宇宙

顕微鏡学者マレック・ミシュ(Marek Mis)の光学顕微鏡写真は、さまざまな照明技術を組み合わせて、肉眼では見えない生物学的構造(科学的な役割)と豊かで見事な色彩(アート)を実現する。
米国の微生物学者、ポール・デ・クライフ(Paul De Kruif:1890-1971)の著書「微生物ハンター(Microbe Hunters:1926)」に大きな影響を受けたというマレック・ミシュは、顕微鏡は異次元の扉を開く道具で、ミクロの世界には探索すべき領域が非常に多く、40年間にわたる撮影キャリアをとおして、新しい発見の連続。終わりのない冒険が続く。
ユニフォトプレスのパートナー「Science Photo Library」が契約する顕微鏡学者マレック・ミシュの芸術と科学を兼ね備えたミクロの小宇宙旅行。

Category : 科学

Date : 2022.11.24

参考文献

分子レベルで見た薬の働き(平山令明著/講談社刊)
美の文明をつくる(川勝平太著/筑摩書房刊)
マレック・ミシュ

神秘的な生命現象の正体を探る

人体の機能を正常に保つため必要な有機化合物のビタミンは、体内ではほとんど合成できないため、食物から摂取する必要がある。水溶性のビタミンB群、ビタミンC。脂溶性のビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがある。
ビタミンB1の不足によっておこる病気の「脚気(かっけ:beriberi)」。ビタミンKには血液凝固のほかに骨形成を促進する作用と骨吸収を抑制する作用があることがわかり、骨粗鬆症治療薬として利用される。
白米が主食になった江戸時代に、多くの人々が苦しんでいた脚気は、とくに子どもは1度脚気にかかると数日で死んでしまうこともあったため、「三日坊主」とも呼ばれ、現在では何事も長続きしない人の例えとして使われている。
1910年、鈴木梅太郎(1874-1943)は、米ぬかに含まれるビタミンB1(オリザニン)を発見し、多くの脚気患者を救った。鈴木梅太郎がビタミンB1を発表した12月13日は、現在「ビタミンの日」に制定される。1911年、ポーランドの化学者カシミール・フンク(Casimir Funk:1884-1967)が、「オリザニン」を「ビタミン」と名付けた。

内部構造を解き明かす

肉眼ではその存在が判別できず、顕微鏡を使わないと見えない微生物を「microorganism」、肉眼で見えるものを「macroorganism」と呼ぶ。
1655年、英国のロバート・フック(Robert Hooke:1635-1703)は、コルクを薄く切って顕微鏡で観察し、コルク細胞が四角い小部屋構造だったことを発見し、修道院の部屋を連想して「セル(Cell)」と名付けた。
オランダのレーベン・フック(Leeuwenhoek:1632-1723)は、1674年に原生動物(単細胞生物)を発見。また1683年に細菌を発見。1838年、ドイツの植物学者シュライデン(Matthias Jakob Schleiden)が植物について、1839年、テオドール・シュワン(Theodor Schwann:1810-1882)が動物について、「生物としての構造と機能の最小単位は細胞である」という細胞説(cell theory)を提唱した。
現在、地球上のすべての生物は、細菌(Bacteria)、古細菌(Archaeon)、真核生物(Eukaryote)の3つに分類される。

好奇心を惹きつける驚きの世界

虫眼鏡(拡大鏡)は、ドイツ語圏ではルーペ(Lupe)、英語圏では「magnifying glass」と呼ばれる。大相撲の「序ノ口」は、番付表で最も小さい文字で記載されるため、俗称で「虫眼鏡」と呼ばれる。レンズ(Lens)という名称は、レンズ豆(ラテン語のlens)に由来する。光学(optics)の語源はギリシャ語のopticaで、もともとは「視覚論」を指す。いまでは「グーグル・レンズ」で、スマホのカメラや写真を使って、目の前にあるものをインターネットで調べることができる。
眼鏡が普及したのは15世紀に入ってからで、同時期にドイツのグーテンベルクによって印刷機が発明され、大量の書物が流通したことが、眼鏡の普及に拍車をかけたという説もある。
ガリレオ(1564-1642)式望遠鏡は、凸レンズ1枚と凹レンズ1枚からなる屈折式の望遠鏡で、最終的には32倍の望遠鏡を作って、天体を観測し、数々の成果を発表した。ケプラー(1571-1630)式望遠鏡は、凸レンズ2枚を組み合わせ、倍率をいくらでも拡大でき、視野が広いことから、ガリレオ式望遠鏡を駆逐した。
1420年~1620年に至る200年間、欧州から見て新しい土地を発見しようという航海が活発に行われ、発見は、新しい富、新しい物産、新しい機械、新しいものの考え方を欧州にもたらした。

お問い合わせ・ご相談 無料

こんな写真を探している
こんな企画があって写真を多数使用したいなど、
ご相談は無料で承っております。

TEL 03-3264-3761 mail お問い合わせフォーム
×
×CLOSE