レアメタル憧憬

写真で表現された周期表（periodic table）。周期表は、物質を構成する基本単位である元素を、原子番号 (原子核内の陽子の数)の順で並ぶように作成され、縦の列（グループ）は周期律にしたがって配置されている。標準的な周期表には、18の族と7つの周期に従って118の元素（element）が配列される。 この周期表は、2005年にIUPAC（国際純粋応用化学連合）によって公開された標準名と命名法を使用している。

絵画「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」で有名な画家フェルメールが使用したブルーの顔料は、フェルメール・ブルーと呼ばれる。フェルメール・ブルーの原料ラピスラズリは、ケイ酸塩鉱物で宝石としても使われる。ラピスラズリ（lapis lazuli）の主成分は「ラズライト（lazurite）」で、含まれるマグネシウムと鉄の比率で青の濃淡が変わる。

タンタル（Ta, Tantalum, 原子番号73）。小型大容量のタンタルコンデンサ（tantalum capacitor）は、寿命も長く、携帯電話に不可欠な部品。タンタルコンデンサの用途は広く、パソコン、テレビゲーム機、カーナビ機器等の電子回路に10～100個組み込まれる。最近では結婚指輪として利用されるようになった。

2014年のノーベル物理学賞を受賞した窒化ガリウム（GaN,gallium nitride）による高輝度青色発光ダイオード（LED）の発明は、世界中にLEDを普及させ、大きな省エネ効果を上げた。

ジルコニウム（Zr, zirconium, 原子番号40）の酸化物（ZrO2）をジルコニア（zirconia）と呼ぶ。ジルコニアをレンズの表面に蒸着させると、光の透過率を飛躍的に高めた明るいレンズとなる。またジルコニア両側面に多孔質電極を設け、片側を大気、その反対側を排気ガスにさらすと、酸素濃度に応じて起電力が発生する。この特性を活かしたのが酸素センサーで、内燃機関の電子制御に不可欠なパーツ。歯科素材としても利用が広がっている。

チタン（Ti, Titanium, 原子番号22）の名称は、ギリシア神話の地球最初の子、ティーターンにちなむ。高強度、軽重量、耐食性、耐熱性、環境性能を備え、さまざまな分野で活用されるが、精錬・加工が難しく、費用がかかるため、大量には使われていない。人工関節をはじめ、酸化チタンの粉末は、化粧品のおしろい・ファンデーション（白色顔料）に利用される。 500度の高温でも有効な強度を保てる耐熱性からロケット、航空機、潜水艦に利用される。最新の研究では、月や火星の表面に分布するレゴリス（粉末状の岩石）とチタン合金を、レーザーを利用して焼結させる方法が開発され、月や火星での建造物の材料としても期待されている。

非鉄金属専門の先物取引所のLME（London Metal Exchange：ロンドンメタル取引所）。トレーダーが金属の供給を扱う。アルミニウム合金、銅、鉛、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛の供給は、3か月後、15か月後、27か月後の生産に基づいて取り引きされる。

リニアモーターカーは磁石によって地上10cmを浮かんで進む。リニアモーターカーの底面には、ニオブチタン合金（niobium‐titanium alloy）の超電導磁石が並ぶ。超電導磁石は液体ヘリウムの入った真空容器におさめられ、冷却され続けている。冷却することで、電気抵抗がない「超電導」の状態になり、抵抗がない分、熱が発生せず、エネルギーロスもなくなる。

ニオブ（Nb, niobium, 原子番号41）の単体は自然界では発見されておらず、他の元素と化合して鉱物中に含まれている。ニオブがニッケル、コバルト、鉄をベースとした超合金に用いられており、含有比率は6.5パーセントにも達する。ジェットエンジン部品、ガスタービン、ターボチャージャーなど、利用範囲は広い。アポロ計画のロケットエンジンのノズルは、ニオブチタン合金でできている。

ニオブ（Nb, niobium, 原子番号41）の名は、ギリシア神話に由来し、タンタルの語源となったタンタロスの娘であるニオベーから来ている。タンタルとニオブが物理的・化学的によく似た特徴を反映したものとされる。ニオブは超伝導材料に用いられる。ニオブチタン合金は、リニアモーターカーの製造に不可欠で、病院ではMRI（核磁気共鳴画像法）の超電導電磁石に利用される。また毒性が低いことから貨幣にも使われている。

リチウムイオンバッテリーには、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなどのレアメタルが使われている。EV（電気自動車）の車体価格は、その３分の１がバッテリーによって占められるとされ、EVを100万台を生産するには、リチウムイオン電池の主原料であるリチウムが年7150トン、コバルトが年1万1000トン必要という。米テスラ社が2030年に目指すEVの生産台数は2,000万台。

ドイツのブッパータール気候・環境・エネルギー研究所。同施設のシュミット・ブレーク（Schmidt Bllek）博士が1994年に提唱した「エコロジカル・リュックサック（エコリュック）」では、重量約1トンの乗用車のエコリュック総量は14トン、56グラムの携帯電話1台のエコリュックは31キロで、携帯電話は約550倍もの重さを負っていることになるという。

永井豪の漫画で、主役の巨大ロボットの名称「マジンガーZ」は、富士山麓から発見された「ジャパニウム（架空の物質）」から精錬される特殊合金が主材料とされる。「機動戦士ガンダム」シリーズのうち、宇宙世紀、未来世紀、アフターウォーを舞台とする作品で、主にモビルスーツの装甲材として用いられたのが、「ガンダリウム合金（Gundarium Alloy）」という架空の物質だった。

メーキャップ化粧品には欠かせないファンデーションや白粉（おしろい）は、酸化チタンの粉末が利用されている。余分な油を吸収し、てかりをおさえ、肌の表面をなめらかにして自然に見せる。もともと白粉は、肌を白く見せるもので、江戸時代に広く一般に普及した。当時の原料は、デンプン、貝殻、粘土などの粉末。鉛白粉（なまりおしろい）はのびや、つきがよく、比較的安価であったため広く使用されたが、鉛中毒の問題は深刻で1900（明治33）年、鉛白粉は使用禁止となった。

ブロンズ像の起源は、チグリス・ユーフラテス川周辺（現在のイラク）で起こった初期のメソポタミア文明のシュメール文明と言われている。銅や錫の産地だったイラン高原から採掘した、銅や錫などでブロンズ像は鋳造された。写真は紀元前2094～2047年のウルⅢ時代に作られた銅像。

ルビー（ruby）とサファイア（sapphire）は、ともにコランダム (corundum)と呼ばれる酸化アルミニウムの結晶で、不純物イオンにより色がついたもののなかで、赤色をルビー、赤色以外をサファイアと呼び分ける