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五穀の王、米の物語

植物名は「稲」、実は「籾」、殻をはずせば「米」、炊けば「飯」、水分が多ければ「粥」。一般的な米は「粳(うるち)」と呼び、粘り気の強い米を「もち米」と呼んだ。「もち米」をつけば「餅」になり、収穫後の茎は「藁(わら)」と呼ぶ。長く米食が生活に密接にかかわる日本では、米を正確に表現する語彙が発達した。日本人にとって、米は単なる食べ物ではない。神に捧げる供物であり、年貢として支配の道具となり、時には人々を飢饉に追い込み、争いを生む「富」でもあった。この特集では、稲作の起源と日本列島における定住と社会の始まり、水をめぐる争いや、祭祀・神道・民俗信仰の中心的存在である米について、多角的な視点から「米の物語」をひもといていく。

Category : 文化

Date : 2025.05.21

参考文献

お米の歴史(亀田製菓株式会社)

https://www.kamedaseika.co.jp/cs/knowledge/knowledgeRice/okomeHistory.html

米の伝来

米の起源は、今からおおよそ1万年以上前のアジア、特に中国やインドの湿地帯にあると言われている。最も古い証拠が発見された場所は、中国の長江流域やインドのガンジス川流域であり、ここで原始的な米の栽培が始まったと考えられている。弥生時代における水田の誕生は、主に中国大陸や朝鮮半島南部から伝来した水田稲作農耕の開始を指す。これにより、それまでの縄文時代の採集・狩猟・漁労中心の食料採集経済から、食料生産経済へと移行した。最初の栽培種は「アジア型稲(インディカ種)」で、これは熱帯や亜熱帯地域に適していた。現代の稲は世界中で栽培され、丸みがあるジャポニカ米(japonica)、細長いインディカ米(indica)、熱帯に適応したジャワニカ米(javanica、またはtropical japonica)の3つの主要な亜種(栽培種)に分類される。雑草を抑え、安定的に生産量を確保できる水田稲作は、水を引く灌漑(かんがい)と排水の管理(治水)が不可欠で、イネを栽培する農法にとどまらず、社会・文化・国家形成にまで深く関わってきた。

米による支配

米は、アジアから世界へと広がり、欧米やアフリカにも伝播した。16世紀から17世紀にかけて、米はヨーロッパやアメリカ大陸に紹介され、商業的に重要な作物として栽培されるようになる。特に、アメリカ南部では、アフリカからの奴隷労働力を使って米の栽培が盛んになり、経済の基盤を支える作物となった。また、治水にまつわる争いは、古代から現代に至るまで、世界中で数多くの歴史的な事例がある。治水は、川や湖、湿地の管理を通じて洪水の防止や水資源の確保を目的とした活動であり、農業や都市の発展と深く関連しており、しばしば異なる地域間での水利権や土地利用を巡る対立、また政治的・経済的な利害関係から生じている。日本には、稲作農業が始まった古代から、米を中心とする社会ができる。米栽培の共同労働、農村共同体、水の管理から生まれた結(ゆい)という共同体などが、日本の社会の基礎ともなっている。

米と文化

米は、古代から現代に至るまで、世界中で最も広く食べられている食材の一つである。その栽培と収穫の過程は、多くの文化と深く結びついており、米は単なる食べ物以上の意味を持っている。米にまつわる文化は、宗教的儀式、季節の行事、そして地域の伝統と切り離せないものである。神社では、新穀を神に捧げる「新嘗祭」や「神嘗祭」が行われ、天皇自らが米を奉納する儀式も今なお続けられている。近年は、スマート農業(スマートアグリカルチャー)と呼び、最新のテクノロジーを活用して農業の生産性を向上させ、効率的で持続可能な農業を実現する革新的な取り組みで、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、ドローン、ロボットなどの先端技術を駆使することで、農作業の精度と効率を劇的に向上させている。

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