人新世

ノーベル化学賞受賞者として有名なオランダの大気化学者パウル・クルッツェン（Paul Crutzen:1933-2021）は、窒素酸化物（NO）と二酸化窒素（NO2）がオゾンと触媒的に反応して光化学スモッグを形成する論文を発表。新しい地質時代の「人新世（anthropocene）」に入ったことを提唱。パウル・クルッツェンの論文は、1990年代、地球科学分野で最も多く2,911回引用された。

地質年代の中生代の年代区分名は、欧州の地層の特徴に由来する。ジュラ紀（Jurassic period）はフランスとスイス国境のジュラ山脈に、白亜紀（Cretaceous period）は欧州のこの時代の地層によく見られるチョーク（ラテン語のCreta：クレタ、日本語の白亜）に由来する。

生物地球化学者ウラジーミル・ヴェルナツキー（Vladimir Vernadsky：1863-1945）は、ノウアスフィア（noosphere：叡智圏）は地球発達過程の第3段階で、第1段階の「ジオスフィア（Geosphere：無生物の物体）」、第2段階の「バイオスフィア（Biosphere：生物圏）」を経て、生命の出現がジオスフィアからの転換をもたらし、人間の認識の出現が生物圏からノウアスフィアへの転換をもたらしたと考えた。この考え方は、ロシア宇宙論に重要な役割を果たした。同氏はウクライナの1000グリブナ紙幣にも描かれる。

博物学者で探検家のフリードリヒ・ハインリヒ・アレクサンダー・フォン・フンボルト（Friedrich Heinrich Alexander von Humboldt：1769-1859）は、1798年から1804年にかけて南北アメリカ大陸の動植物、気候、地形などを科学的観点で調査し、入植者による環境破壊の連鎖状況を報告した。

米国のヘンリー・デイヴィッド・ソロー（Henry David Thoreau：1817-1862）の1854年の著書「ウォールデン 森の生活（Walden）」は、後の多くの作家に大きな影響を与えた。ソローの作品は、人間と自然との関係をテーマにしたものが多く、自然文学の草分けに位置づけられ、環境保護運動の先駆者としての評価も確立されている。

米国の作家ラルフ・ウォルドー・エマーソン（Ralph Waldo Emerson：1803-1882）は、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの師。

アイルランドのエドワード・マックス・ニコルソン（Max Nicholson：1904-2003）は、先駆的な環境保護主義者、鳥類学者、国際主義者で、世界自然保護基金の創設者。

1871年、マサチューセッツ工科大学に最初の女性として入学したエレン・スワロー（Ellen Swallow：1842-1911）は、1866年にドイツのエルンスト・ヘッケル（Ernst Haeckel：1834-1919）が提唱する生態学を表すエコロジー(Oekologie：ギリシャ語）を、語源Oekos（家＝環境）から環境保全をめざした社会運動にこの語をあてた。当時は米国においても「女性には高等教育など不要」という風潮が強い時代で、女性に対する偏見や社会的差別と戦いながら、スワローは精力的に研究を行い、家政学の新しい科学の基礎を築き、母校で後進の指導にあたった。

1962年、レーチェル・カーソンの名著「沈黙の春（Silent Spring）」が、多くのデータを元に、農薬の大量使用がもたらす危険性を警告したことにそって、当時の第35代米国大統領ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ（John Fitzgerald Kennedy、1917-1963年）は、ただちにDDT（ジクロロジフェニルトリクロロエタン）とBHC（ベンゼンヘキサクロリド）の製造禁止を打ち出した。

日本では、1931年に国立公園法が施行され、1957年に自然公園法と改名された。環境庁設置後の1972年には自然公園保全法ができた。現在では全国に34の国立公園があり、国土面積の5.8％に相当する。

さまざまな緯度と気候（熱帯、温帯、極地）での植物の種類の分布と変化を描いた19世紀の植物地図。世界地図は25の異なる地域で色分けされ、上部はアンデス、テネリフェ、ヒマラヤ、アルプスとピレネー、ラップランドの山岳生息地。この作品は、スコットランドの地理学者アレクサンダー・キース・ジョンストン（Alexander Keith Johnston 1804-1871）によるもので、アレクサンダー・フォン・フンボルトの考え方に基づいて描かれた。

化石による地質時代区分のタイムライン。 古生代（約5億4,125万から2億5,217万年前）の化石には、骨格要素、軟体後生動物、動物の痕跡、魚、脊索動物が含まれている。古生代の終わりに大規模な絶滅が起こり、爬虫類が多様化。 中生代（2億5200万年から6600万年前）の化石には、最初の哺乳類、恐竜、鳥、顕花植物が含まれる。恐竜も多様化したが、中生代に絶滅した。 新生代（6,600万年前）の化石には、哺乳類の多様化と人類の進化が含まれている。

約6,500万年前、現在のメキシコのユカタン半島に衝突した小惑星の衝突イラスト。衝撃により、数兆トンの塵が大気中に放出され、地球の気候が大幅に冷却され、大量絶滅の原因と考えられており、恐竜は絶滅した。

バイオスフィア（Biosphere）は、米国アリゾナ州に建設された、巨大な密閉空間の中の人工生態系。実験は2年交替で科学者8名が閉鎖空間に滞在し、100年間継続される予定だったが、実際には最初の2年間で途切れた。第1回は1991年9月26日から1993年9月26日まで、その後第2回は1994年に6か月間行われた。

1872年3月1日、米国連邦政府は、世界で最初の国立公園としてイエローストーン国立公園を設立。1916年に国立公園局（National Park Service）が設立され、同局が管理する公園地は全米に400以上あり、総面積は34万km2で日本の国土面積（38万km2）に匹敵する。現在、米国には約60の国立公園がある。

米国で1963年に制定された大気浄化法（Clean Air Act）は、酸性雨対策、オゾン層の保護が目的で、自動車の排出ガスの削減や二酸化硫黄排出量の削減、フロン、四塩化炭素の全廃が主な内容。1970年の改正法は、米国上院議員のエドマンド・マスキー（Edmund Muskie：1914-1996年）の提案によるため、通称マスキー法(Muskie Act)と呼ばれる。特に自動車排出ガス規制に関して、日本では「昭和48年・50年規制」で引き合いに出されることが多い。具体的には、48年の規制値に対して50年規制では、一酸化炭素（CO）と炭化水素（HC）は約10分の1、NOx（窒素酸化物）は半分に下げることが求められた。

人気映画の「ジュラシックパーク」は、ジュラ紀の公園という意味だが、登場するティラノサウルス（Tyrannosaurus）、トリケラトプス（Triceratops）、プテラノドン（Pteranodon）などの恐竜や翼竜は、正確には白亜紀後期に存在した代表的な種。

2020年9月20日の南極上のオゾンホール（紫と青）の範囲の衛星画像。オゾン層の厚さは、紫（最低）から青、緑、黄色、赤（最高）まで色分けされている。オゾンホールは2020年10月2日に年間最大値に達し、約2,500万平方キロメートルに達した。2020年のオゾンホールのサイズは、2018年と2015年の最大面積に匹敵した。

近年、従来敵対することが多かった環境NGOと企業との協業が急増している。日本の企業では、ソニーとWWFの地球温暖化ガス排出削減への取組みや、パナソニックと国際環境NGOグリーンピースのノンフロン冷蔵庫（CFC-free refrigerator）の共同開発は有名。日本においてもフロン排出抑制法が2020年4月に改正された。

陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年の期間に0.85℃上昇した。今後、有効な温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末（2081年～2100年）の世界の平均気温は、現在より2.6～4.8℃上昇し、厳しい温暖化対策をとった場合でも0.3～1.7℃上昇する可能性が高いことが、多くの科学者から指摘されている。さらに、平均海面水位は、最大82cm上昇すると予測されている。

産業革命以来、人間は石油や石炭などの化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出し、経済を成長させてきた。その結果、大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて40％増加した。

インドネシアの首都ジャカルタがあるジャワ島は、1年間に海面が6ミリ上昇し、20センチ地盤沈下する。近年、頻繁に豪雨で水位が30センチ上昇し、大きな被害が出ている。インドネシア政府は、首都をジャカルタからカリマンタン島に移転する計画を発表している。人口の集中と慢性的な交通渋滞に加え、差し迫ってきた水没の危機という事情もありそうだ。

1948年に創設されたIUCN（国際自然保護連合：International Union for Conservation of Nature and Natural Resources）は、約1,200の組織（200を超える政府・機関、900を超える非政府機関）が会員となり、世界160カ国から約11,000人の科学者・専門家が、6つの専門家委員会に所属し、生物多様性保全のための協力関係を築いている国際的な自然保護団体。本部はスイスのグランにある。

SARS-CoV-2の変異種「N501Y」は、ウイルスのたんぱく質の501番目のアミノ酸が、N（アスパラギン）からY（チロシン）に置き換わったもので、同様にE484Kは484番目のたんぱく質がE（グルタミン酸）からK（リシン）に置き換わったもの。ウイルスは変異を繰り返しており、K417N、D614G、N439K、Y453Fの変異種の動向が注視されている。