地図が明かす世界

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地図が明かす世界

新学習指導要領の「学びの地図」は、学校内で完結していた教育課程を学校外にも共有していき、子供たちの多様で質の高い学びを引き出す理念の全体像を見渡せる意味で地図と呼んだ。また、ビジネスでは、自社製品やブランドの立ち位置、市場での競合優位性を見つけるために、ポジショニングマップを設定する。
中世の荘園制度では、領地の境界線を明確にするための地図が描かれ、古代地理学が導いた地球球体説は、中世には宗教面で異端の説として否定され、地球平面説が採用された。
世界中でベストセラー「話を聞かない男、地図が読めない女」の著者、アラン・ピースとバーバラ・ピーズは、空間認識能力には性差があるという。
世界感を“見える化”した地図は、文字よりも古いといわれ、歴史をたどると、周囲の状況の中で取る立場や立脚点、人類の活動範囲や当時の世界観を知ることができる。

Category : 歴史

Date : 2023.05.10

地図の発達とセンス・オブ・ワンダー

測量技術の向上に応じて、20世紀に入ると、地図の精度は著しく向上したが、政治的な意図で敢えて誤った情報を書き込む、もしくは隠匿する動きも見られた。1960年代のソビエト連邦の地図では、米国からのミサイル攻撃を警戒し、国防的意図からレニングラード(サンクト・ペテルブルグ)の都市や鉄道の位置が10キロ単位でズレていた。
もともとが軍事用だったGPS測量で提供されるデータは、200~300メートルの誤差があるものが民生用に公開されている。基地局やWi-Fiから提供される携帯電話や、民放FMからの信号を使用するカーナビなどでは、誤差を補正して位置情報を得ている。
「沈黙の春」の著者として知られるレイチェル・カーソンは、遺作「センス・オブ・ワンダー」で、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいと願った。

文字なき文明

かつてメソポタミア(イラク)に存在した古代都市「ウルク(Uruk)」で、紀元前3000年頃の地層から、象形文字が刻まれた大量の粘土板が出土した。これが最古の文字として知られるが、地図の歴史は文字の歴史よりも古いという見方が支配的。地図または地図類似表現の出現は、遥か旧石器時代末期の紀元前1万5,000年にまで遡る可能性があり、文字を知らなかった先史時代の住民が、すでに地図を描く能力を持っていたとされる。
メソポタミア、エジプト、インダス、黄河のいわゆる世界四大文明は、体系的な文字をもつ文明。しかし、インカ帝国のように、結縄文字以外に体系的な文字をもたなかった可能性が高いが、高度な文明と文化をつくり出した文明社会は、複数確認されている。その担い手は、1万2千年前に、ベーリング海峡を渡ってアジアから移動してきた古モンゴロイド(proto Mongoloid)とされる。

地図はパラダイム発見装置

砂漠の地平線から太陽が上るとき、太陽の全形(直径)が地平線上に現れるまでの時間(約2分間)に、人は約185メートル歩くことができる。これを1スタディオン(stadion:複数形はスタディア)という長さの単位と、古代ギリシアやローマでは定義した。また、レースのトラック測定の単位にも採用されたことから、スタジアムの語源とされる。
古代の地図は、長さの単位に、広くスタディオンが採用された。一方で、航海者は海里(マイル:1852メートル)を単位として採用。陸上のマイル(1609メートル)と海里は、微妙に異なった。メートル法が正式に採用されたのは、1840年で、地図を作るための測量でも、統一された正確な単位は必要不可欠だった。

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