ショコラの進化
L’évolution du chocolat

カカオに供物をしている僧侶を描いたレリーフ付きの石板。西暦700-800年。ユカタン半島の付け根の部分に位置するメキシコのホヌタ、タバスコ地区出土。メキシコ国立人類学博物館蔵。

グアテマラで見つかったマヤ文明のカカオ神像。西暦600-900年。粘土に塗装された陶器。インディアナポリス美術館蔵。マヤ族は、カカオ飲料を神への捧げものとして、また儀式で使用された。

1894年、カカオ農園での収穫風景が描かれたカラーリトグラフ（石版画）。スペイン人はカリブ海と南アメリカの植民地でカカオ栽培を拡大。1840年のドイツ人１人当たりのカカオ消費量は年間10グラムでしたが、1875年には50グラム、2010年には9キログラムを超え、2017年は11.1キロ。

カカオの木（Theobroma cacao）で熟すカカオ果実（カカオポッド）。熟した鞘は、黄色または赤に変わる。カカオの年間収穫量は、1720年までに3,400トンに達したと言われる。1911年には約25万トン、1960年代には200万トンを超えた。中南米に加え、アフリカや南アジアでの栽培も拡大し、現在の年間収穫量は約500万トン。

カカオなどに含まれるテオブロミン（theobromine）は、近年まで血管拡張薬、中枢神経刺激薬、利尿薬として利用された。現在は薬として利用されていないが、血清コレステロール低下効果やリラックス効果など、健康への影響に関する論文は多数。テオブロミンは、名前に反して臭素（Bromine）は持たず、ギリシャ語の「神の（theo）食べ物（broma）」という意味を持つカカオの学名Theobromaに由来する。

カリブ海の島国、グレナダのカカオ農園でカカオ豆を乾燥させるスタッフ。カカオ豆の生産には、カカオの収穫から、発酵、乾燥までのさまざまな工程に、多くの労働力が必要とされる。

カカオの花。木の幹に直接開花する幹生花（かんせいか）の一種。花の大きさは約3cm。受粉して実になるのは数個。結実後、約6ヵ月で完熟。実（カカオポッド）の収穫まで約5年かかることもあるという。

ホットチョコレート飲料（ショコラトル）を泡立てる際、チョコレートの味に影響を与えないよう木製で作られているモリニージョ（molinillo）は、4000年前から現在まで利用されている。

マヤのチョコレート（カカオ）を飲むために使用された食器に書かれたマヤ文字を読む。7世紀、主要な貿易都市だったカンクエンのタージチャンアク宮殿で発見された。

熟したカカオ果実（カカオポッド）。熟すると赤や黄色に変わり、１つの果実から60個程度のカカオ豆（種子）が採取できる。カカオ豆を発酵、乾燥、焙煎、細かく挽くと、カカオパウダーとなり、チョコレートの原料となる。ペルーの「パロブランコ」農園で撮影。

カカオ果実（カカオポッド）は、厚さ1センチ以上の堅い殻で覆われ、中にはパルプと呼ばれる柔らかい白い果肉に包まれた60個程度のカカオ豆（種子）が入っている。パルプを発酵、乾燥、焙煎、粉砕してココアパウダーを製造する。

スペインの探検家兼征服者のエルナン・コルテス・デ・モンロイ・イ・ピサロ（スペイン語: Hernan Cortes de Monroy y Pizarro, 1485年-1547年）が、1519年、現在のキューバからアステカ帝国に入った際にチョコレート飲料と出会い、通貨としてのカカオ、万能薬としてのチョコレートの価値をいち早く認め、欧州にチョコレートの存在を初めて知らせたとされる。一方、1502年の航海で、クリストファー・コロンブスがスペインにカカオの実をもたらせたのが欧州初という説もある。

1828年、クンラート・バンホーテン（Coenraad Johannes van Houten,1801年-1887年）、オランダの化学者。ホットチョコレートを飲みやすくする目的で、カカオマス（cocoa mass）をアルカリ性の塩で処理し、ココアバター（cocoa butter）を抽出する油圧式の圧搾機を開発

1847年、英国のジョセフ・フライ（Joseph Fry）は、飲みやすいホットチョコレート開発の副産物だったココアバターから固形のチョコレートを開発。ワットの蒸気機関を使用してカカオ豆を粉砕する方法を確立し特許を取得。チョコレート工場を建設し、英国最大のチョコレート会社（JS Fry＆Sons）を創業した。

ジョセフ・フライは、ココアバターが約33℃で溶け、26℃前後で固まるという性質を活かし、すり潰したカカオ豆、砂糖、ココアバターをバランス良く配合することで、固形のチョコレート開発と機械化に成功した

1848年にビクター・オーギュスト・プーラン（Victor Auguste Poulain）が創業したフランス最古のチョコレートブランド「プーラン」（Chocolat Poulain）の広告。1910年、カラーリトグラフ。

18世紀の衣装でチョコレートを食べる女性。1924年12月発行の週刊誌「The Bystander」クリスマス号に掲載されたA.L.Graceのイラスト。

母親、5人の子供と、椅子に座ってそれを見つめる父親の幸せな家庭を描いたネスレ チョコレートの広告。イタリア。1950年代。

英国ブリストルに建設されたJ.S.Fry&Sons社のチョコレート工場。ビジネスでの成功や幸運の象徴とされた。1901年、Amalgamated Pressの写真。同社は、19世紀、キャドバリー（Cadbury）とロントリー（Rowntree）と並ぶ英国3大製菓メーカー。

ココアパウダーの精錬機械（コンチェ）を発明したロドルフ・リンツ（1905-2000）は、スイスの弁護士兼外交官。1953年から1954年までユニセフの議長を務め、1956年から1960年まで国連難民高等弁務官を務めた。リンツは1960年にジュネーブ大学から名誉博士号を取得。

1941年、ドイツのキルヒベルクにあるリンツ社のチョコレート工場。ココアパウダーの精錬工程（コンチング）では、強力に攪拌しながら練って液状化させます。この精錬工程に使用する機械（コンチェ：CONCHE）を発明したのが、スイスのロドルフ・リンツ（Rodolphe Lindt）。長時間稼働させることで、滑らかなチョコレートとなる。

アンリ・ネスレ（Henri Nestle：1814-1890：ハインリッヒ・ネスレから改名）、育児用粉ミルクを開発・製造。世界最大食品・飲料会社のネスレ創設者。ネスレはドイツ語で「鳥の巣」の意味で、同社のトレードマークとなっている。同じベベル（Vevel）村に住むダニエル・ペーター（Daniel Peter 1836年-1919年）が、溶かしたチョコレートにコンデンスミルクを加え、長時間混ぜ合わせること（コンチング：conching）で、水分を蒸発させ、冷やす過程でココアバターの結晶の中にコンデンスミルクの成分を分散させる技術開発に成功。ミルクチョコレートを誕生させ、スイスのネスレ社が売り出した最初のミルクチョコレートにつながる。

「サロン・デュ・ショコラ」では、ショコラティエとファッションデザイナーが協力し、チョコレートドレスのファッションショーが開催される。2019年は16チームが新作を発表した。

ジャン・ポール・エヴァン（Jean Paul Hevin：1957年生）フランスのマイエンヌ出身のパティシエ・ショコラティエ。1975年、インターコンチネンタル・パリでパティシエとしてキャリアをスタートさせた後、ホテル・ニッコー・ド・パリにてジョエル・ロブションのもとシェフ・パティシエに昇格。パティスリー「ペルティエ」東京店でシェフ・パティシエを務める。1986年には、フランスでMOF（フランス国家最優秀職人章）を受章。1988年、パリでジャン=ポール・エヴァンを創業し、2002年に日本初出店。

ピエール・エルメ（Pierre Herme：1961年生）フランスのパティシエ・ショコラティエ。VOGUE誌から"スイーツ界のピカソ"と称される。約500年の歴史を持つ和菓子の老舗「とらや」との共同開発や、東京大学総合研究博物館と「スイーツ＆サイエンス」と題したプロジェクトを共催。

青木 定治（1968年生）名古屋市出身、パリに拠点を置くパティシエ、ショコラティエ。 フランスのショコラ品評会で最高位受賞。フランスのグルメガイド「ピュドロ」で、2011年の最優秀パティシエに選出される。

テンパリング（Tempering：焼き戻し）は、温度調整作業で、カカオバターの結晶を最も安定した状態にする。熟練の技術が求められる。

アカデミー賞5部門にノミネートされた米国映画「ショコラ（Chocolat）」は、フランスのディジョン北西部にあるフラヴィニー・シュル・オズラン (Flavigny-sur-Ozerain)で撮影された。ジョアン・ハリスの同名小説を映画化したもので、2000年に公開。名優ジュディ・デンチやジョニー・デップが出演。

1956年、OLFA社を創業した岡田良男が発明した「刃が折れるカッターナイフ」は、世界中で使用されているが、板チョコレートの溝からヒントを得て発案したという。

カカオの木のゲノム研究。カカオの木（Theobroma cacao）のゲノムのマッピングから分子マーカーを使用して、耐性遺伝子の配列を決定する検査技師。この研究は、米国農務省の農業研究サービスによって実施されている。