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男装の歴史
Beyond gender bias

衣服によって性の境界を超えるクロスドレッサー(異性装)、なかでも女性が男性に属する服装をする男装は、女性としての規範や役割からの逸脱、性別を偽る偽装や武装、装いとしての男装など、その理由はさまざま。
物語や演劇で異性装を描いた作品は多く、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」では男装のヒロインが活躍する。手塚治虫の漫画作品「リボンの騎士」主人公のサファイア、池田理代子の漫画作品「ベルサイユのばら」に登場する男装の麗人オスカルは有名。また、宝塚音楽学校の卒業生で、未婚女性だけで構成される宝塚歌劇団の団員たちは「タカラジェンヌ」と呼ばれ、異性配役に多くの女性ファンがいる。

Category : 歴史

Date : 2023.02.22

参考文献

異性装 歴史の中の性の越境者たち (中根 千絵・本橋 裕美・東 望歩・江口 啓子・森田 貴之・日置 貴之・阪本 久美子・伊藤 慎吾著/集英社インターナショナル刊)
思想の歩み (水田 珠枝著/岩波書店刊)
女性画家列伝(若桑みどり著/岩波書店刊)

男性の戦士服を纏い戦った女性たち

公教会で禁止されていた男性の戦士服を纏い、祖国フランスのために戦ったジャンヌ・ダルク。兵士として男性と共に戦争を戦った中国の木欄(ムーラン)は、ディズニーのアニメ映画にもなった。独立戦争で米兵として戦ったデボラ・サンプソン、英国軍相手に勇戦したインド中部ジャーンシー藩王国の王妃ラクシュミー・バーイ、ロシアのナデジダ・デュロワなど、男性を装った勇者として、歴史に名を刻んだ女性たちは多い。

未来の文化を創り出した男装する女性たち

ペンネームのジョルジュ・サンドとして知られるアマンティーヌ・オーロレ・ルシール・デュパンは、フランスの作家でフェミニスト。欧州ロマン主義時代の最も著名な作家の1人として知られ、70冊の小説と共に、物語、戯曲など、50冊以上の作品を著した。男装して社交界に入り、女性のために立ち上がり、結婚を非難し、保守的な社会の偏見と戦った。
フランスのココ・シャネルは、女性はスカートを履くという風潮の中で、パンツスタイルを流行させた。米国の写真家フランシス・ベンジャミン・ジョンストンは、男装して付け髭を生やし、自転車を操り、解放された「新しい女性」を写真で表現してみせた。
1800年当時のパリ市条例に逆らい、ズボンをはいたジェーン・デュラフォイは、男装の女性考古学者・作家。女性に対する制限が多いイスラム教の国々を自由に旅行するために、紳士服を着て髪を短くした。
公共の場で男性服を着ることを選んだ多くの著名な女性芸術家たちは、才能の開花を妨げる多くの障害を越えて、女性たちの苦悩を作品をとおして語った。

役者としての男装する女性たち

フランスで職業俳優が登場するのは14世紀後半。記録が残るもっとも古い俳優はジャン・ド・ベスールという笑劇役者とされる。欧州では性別で職業の区分がはっきりとしていた時代で、女性が公共の劇場で舞台に立つことが禁じられていた。
女性の職業的演技者が現れるのは16世紀初め頃とされるが、名前を含め記録が残っていないようだ。文書で確認できる最古の女優は、1592年のヒロインとヴニエール姉妹。ボルドーの市民階層の出身者だった。日本初の女優は、川上音二郎一座に所属する川上貞奴(かわかみ さだやっこ)。1899年、女形の代役としてサンフランシスコ公演に出演し、成功をおさめた。
1890年代から1900年代前半には、「ドラァグキング」と呼ばれる男性の格好をする女性パフォーマーたちが、イギリスのミュージックホールで人気を博し、注目を集めた。戯曲に目を向けると、イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品「お気に召すまま」のロザリンド、「ベニスの商人」のポーシャ、「十二夜」のヴィオラには、男装した女性たちが登場する。

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