文様を読む

葡萄。エジプトのセンネフェルの墓の内部。アメンホテプ2世（在位：紀元前1453年 - 1419年、あるいは紀元前1427年 - 1400年）時代のテーベ市長でアメンの穀倉と庭園の監督でもあった彼の墓の天井には葡萄が一面に描かれている。

葡萄。エジプトのセネフェルの墓の天井の部分。葡萄はたわわに実る果実が多産や豊穣を連想させるため、古くから用いられてきた。

葡萄。故人を護る葡萄唐草。イタリア、サンタ・コンスタンツァ聖堂の天井画。4世紀頃。キリスト教世界ではワインが聖体の神秘を表し、葡萄は「生命の樹」ともされた。

パピルス。エジプトのルクソール（古代のテーベ）にある古代エジプト時代の神殿複合体ルクソール神殿には、パピルスの柱頭装飾をみることができる。紀元前1370年頃。

パピルス。 紙や生活用品など古代エジプト文明の生活になくてはならないパピルスは、抽象化され、列柱や壁画などの装飾に使われた。

ロータス。ツタンカーメンの墓から出土されたネックレス。（3.391005の部分）胸部は空を横切る月の夜の旅、その下には、ロータスが表現されている。エジプト第18王朝時代。紀元前1570年頃 - 1293年頃。

ロータス。ロータス（睡蓮）は「上エジプトの標章」とされ、永遠の生命や再生を象徴している。

幾何学文様。紀元前10世紀から紀元前7世紀ごろの古代ギリシアによって用いられた文様様式。取って付き水差し。三重の線で数種の幾何学文様を分割している。紀元前735-紀元前720年頃のものでギリシア出土。 アシュモレアン博物館所蔵。

メアンダー。古代ギリシアの陶器に多用された短形の連続文。古代ローマや後世のヨーロッパ美術においても広く用いられ、新古典主義の建築や工芸では頻繁に使用された。河川の流れを思わせる幾何学文様。

メアンダー。戦車・馬も描かれているアンフォラ。紀元前735-720 年にアテネで作られた。

ひねり紐。イタリアのサンタ・ジュリア博物館 – 市の博物館の床に描かれているモザイク画（部分）。2世紀頃。複数のロープ状の紐をひねる、よじるなどして表された文様。古代ローマでは、建築物の床や壁を飾るモザイクにみられ、立体的に浮かび上がるのが特徴である。

ひねり紐。ひねり紐を用いた床面モザイク装飾。イタリアのヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレには赤と緑のひねり紐が交差して八角の星形を形成している。3世紀頃。

渦巻。中世ケルト・キリスト教時代の彩飾写本の特徴である古代ケルト美術は渦巻文様によって神秘的なうごきを見せている。霊魂不滅、自然を変容的なものとして見るケルト伝統の生命観が反映されている。アイルランドのダブリン大学、トリニティ・カレッジ図書館所蔵の「ケルズの書」より。800年頃。

組紐。アイルランド国立博物館所蔵のコングの十字架の部分。金属でできた十字架には複数の紐が生き物のように成長しうごめいている。12世紀。

渦巻と組紐。リンディスファーンの福音書の部分。大英図書館所蔵。アングロサクソン様式とケルト様式が融合した宗教芸術における最高傑作の1つと見なされている。700年頃。

魚。キリストを象徴する魚のモザイク画。2つのパンと2つの魚が表現されており、イスラエルのパンと魚の奇跡の教会にある。5世紀。初期キリスト教のモザイク。

魚。ギリシア語の「イエス・キリスト、神の子、救い主」の頭文字は、「魚」を意味する単語「ΙΧΘΥΣ(イクトゥス)」になることから初期キリスト教美術にてシンボルとされた。

聖樹。イタリアのサン・クレメンテ教会にある磔刑のキリストのモザイク壁画。1110年頃。キリスト教における聖樹はエデンの園であり、「生命の樹」と「知恵の樹」の2系統に大別される。

幾何学文様。イスラーム美術では、同一または多様な図形が縦、横、斜め、放射線状に組み合わされて一定のパターンを形成し、無限に続いている。数学で計算された無限の美は神が創造した完璧な世界を暗示するものであり、それは永遠に続くのである。アルハンブラ宮殿のタイル装飾。グラナダ。

幾何学文様。マムルーク朝時代のカイロにあるアシュラフ・バルスバーイのモスクのミフラープは、大理石を切り抜き、組み合わせる高度な技術が示されている。色は抑えられているが、曲線を多用することで細工の難しさを強調している。1423-24年頃。

文字文様。トルコのコンヤにあるインジェ・ミナーレ・マドラサの入り口。中央に、帯状になった浮き彫りの文字装飾がある。13世紀頃。

文字文様。イランのイスファハーンにあるモスク。金曜モスクともいう。西イーワンにある装飾タイルにはスクエア・クーフィー体と呼ばれる四角形の中に書かれた文字文様がある。8世紀に建設、11-12世紀に再建。

植物文様。インドのアーグラ城塞にある花・植物が施された象嵌された大理石の柱。1565‐73年のムガル朝時代。

植物文様。ウズベキスタンのサマルカンドにあるグーリ・アミール廟。上部に幾何学的な花の装飾が施されている。1404年頃。

笠松様。松は常緑であることから古くから吉祥文様（長寿）とされた。竹と梅の日本の木版画、1882年。

青海波（せいがいは）。水面に見える波頭を幾何学的にとらえた文様。未来永劫へと続く幸せへの願いと、人々の平安な暮らしへの願いが込められた縁起の良い柄。

矢絣（やがすり）。矢羽根を縁起の良い柄で、破魔矢と同じ邪気を払うという意味がある。 矢は射るとまっすぐに飛び、戻ってこないため、 江戸時代では結婚をする際、この柄の着物を持たせると射た矢が戻ってこないかのように女性が出戻ってこないと言われ、縁起の良い柄として広く使われた。

矢絣（やがすり）。楊洲周延「真美人　十三」1897年。イギリスのダラム大学内オリエンタル博物館所蔵。「真美人」は明治30～31年にかけて36図描かれてたシリーズでこの作品の女性は、矢絣の着物を着ている。

七宝。円形が永遠に連鎖し繋がるこの柄に、円満、調和、ご縁などの願いが込められた縁起の良い柄で、 人の御縁や繋がりは、七宝と同等の価値がある事を示している柄でもある。

七宝。室町時代または桃山時代 の南蛮様式の収納箱。16世紀。黒漆地に金蒔絵、螺鈿細工で全体に七宝文様が用いられている。

玉屋の若妻おえん。雪景色に描かれた女形の歌舞伎役者。 足元の周りに見られる着物には、青、黒、白の菖蒲文様にがみられ、赤と白の斑点模様が入った長襦袢も描かれている。歌川国貞(1786-1865)。

遊郭の花魁。 1枚目の着物には松・桜・笹、2枚目は亀、3枚目はコウノトリが描かれ、藤色と白黒の雲模様が描かれてる。 黒地にだいだい色の小川に菊（ピンクと藤色）の花と葉を施した帯。 渓斎英泉(1790-1848) 。

菊。菊花や菊花葉をかたどった文様は吉祥文様（長寿）のひとつである。平安時代、朝廷で衣服や輿車（よしゃ）、刀剣、懐紙などに用いられ、天皇家の紋章として今日に至る。江戸時代には菊花紋の使用は自由とされたため一般庶民にも浸透し、菊花の図案を用いた和菓子や仏具、和室に用いる釘隠しなどの飾り金具が作られ、各地に広まった。

菊。1840-1900年の新潟で織られたであろう絣着物。ヴィクトリア&アルバート博物館。全体に菊文様が散りばめられている。

鯉。アメリカのインディアナポリス美術館にある中国でつくられた鯉文蓋壺（青磁・色絵磁器）。1522-66年。

鯉。鯉は縁起のよい魚＝吉祥魚と古来から中国では言われてきた。「鯉が川を遡って竜の門に辿り着き、やがて大きな竜に生まれ変わる」と伝えられ、「出世魚」の代表とされる。

ひし形。ヨーロッパで最も早くから用いられてきたデザインの１つであり、多くのバリエーションがある文様。「聖母マリアのカンティガ集」写本より背景地に用いられたひし形。サン・ロレンツィオ・デル・エスコリアル修道院（スペイン）所蔵。13世紀。

ひし形。ひし形格子窓は、テューダー朝以来の伝統的なスタイルとみなされ、19世紀におけるドメスティック・リヴァイヴァル建築の中でも多用された。イギリス。

グロテスク。古代ローマの装飾に由来し、人物や動植物などを多様に組み合わせたもの。15世紀末にローマ皇帝ネロの黄金宮殿を発掘したことにより、ルネサンス期以降に流行した。イタリアの黄金宮殿（ドムス・アウレア）の天井の装飾。1世紀。

グロテスク。ウフィツィ美術館の回廊の天井にはグロテスク装飾が見られる。動物・植物・人物など変幻自在な組み合わせで、万華鏡のように遊戯的且つ対称的で幻想的な小宇宙のよう。16世紀後半。

整形式庭園。庭園文化が本格的に開花したヨーロッパはルネサンス期およびそれ以降である。庭空間の軸線に左右対称であったり、直線や円等の幾何学的模様や線を基調に図案化された庭園様式は整形式庭園もしくは幾何学式庭園とよぶ。スコットランド最古の居住家であるトラクエアハウスのメイズの庭。イギリス。

整形式庭園。フランスのロワール渓谷にあるヴィランドリー城には幾何学的な造形で「愛の寓意」を表現した庭園がある。

月桂樹。古代ギリシア・ローマ時代から勝者や君主、詩人などに与えられた栄誉のしるし、近代には権威や栄光を称えるシンボルとして、絵画や工芸に用いられた。

月桂樹。戴冠式の正装の皇帝ナポレオン1世（部分）1805年。フランスのヴェルサイユ宮殿所蔵。金の月桂冠を載せたナポレオンの肖像画は古典主義的で、威厳に満ちている。

ポルカ・ドット。水玉模様（ドット柄）の通称。近現代では女性の服飾や男性のネクタイのパターンなどに広く流行した。1972 年 5 月。

ポルカ・ドット。水玉模様（ドット柄）のドレスを着た女性 (スクリーン プリント)、1950 年。

アール・デコ。アール・デコとは、1910年代半ばから1930年代にかけてヨーロッパやアメリカで流行した装飾様式。 線や記号、幾何学的な模様やパターンで構成されたデザインが特徴である。アメリカのクライスラービルの頂部。1930年。

アール・デコ。ジャック・エミール・リュールマンが中心となってその構成を行った、1925 年にパリで開かれた現代産業装飾芸術国際博覧会（L'Exposition internationals des arts décoratifs et industriels modernes）、いわゆるアール・デコ博のパヴィリオン（コレクショヌール館）。

アール・デコ。ベルギーにあるタッセル邸の階段。建築にアール・ヌーヴォーを融合させた世界最初の例である。1893-97年撮影。

アール・デコ。ベルギーにあるタッセル邸はベルギーの建築家兼デザイナーヴィクトル・オルタ (1861-1947) によって設計されている。ま

アール・デコ。ルネ・ラリックの花瓶／テーブルランプ「セイラン」。枝にセキセイインコが2羽施されている。1924 年以降。

アール・デコ。ルネ・ラリックのラジエーターのマスコット、ヴィクトワール（勝利の女神）またはスピリット・オブ・ウィンド（風の精）。 1925 年頃。ヴィクトリア&アルバート博物館。