シャーマンと依り代

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シャーマンと依り代

研究者の間で「シャーマニズム(shamanism)」について、合意された単一の定義は無いが、人類学者、考古学者、歴史家、宗教学者、哲学者、心理学者など、さまざまな分野の学者が研究している。

「トランス(trans)」という特別な精神状態で、脱魂(ecstasy)または憑依・憑霊(possession)を通じて、神仏・精霊などの超自然的存在と直接アクセス・交流・交信する「神仏・精霊のエージェント」をシャーマン(shaman)と呼ぶ説がある。

シャーマニズムという概念は、別の学術的概念アニミズム(animism)にも分類可能な要素を含んでいる場合が多く、霊的であることを、ラテン語のspiritusに由来するキリスト教用語のスピリチュアル(spiritual)で表現する例も見受けられる。

Category : 歴史

Date : 2021.01.22

参考文献

The cultural evolution of shamanism(Manvir Singh著/Behavioral and Brain Sciences)
日本人の祭礼(和歌森太郎著/岩崎書店)
シャーマニズム(エリアーデ・ミルチア著/筑摩書房)

獣頭人身

フランスのドルドーニュ(Dordogne)地方ラスコー(Lascaux)には、半人半獣の洞窟壁画が残されており、初期のシャーマニズムととらえる研究者もいる。現在でも神話やフィクションに登場する獣人(therianthrope、therianthropy)では、人と他の動物の外見を合わせ持つ狼男(werewolf)や人魚(mermaid)は有名。

日本でも飛鳥・奈良時代の隼人石やキトラ古墳壁画などに獣人例がある。「千と千尋の神隠し」に登場する牛鬼は、牛の頭と鬼の身体を持つ妖怪として各地で言い伝えられている獣人がモデルといわれる。

獣頭人身(beast head human body)は、古代エジプト神のアヌビス(犬・ジャッカル)やホルス(ハヤブサ)、象の頭を持つガネーシャ(Ganesha)、牛の頭を持つミノタウロス(Minotaur)、烏天狗など、世界各地で数多く見受けられる。

シャーマンの分類

原始宗教(prehistoric religion)は、筆記が発明され記録が残される以前に、人類の祖先が持っていた宗教的概念や行為と定義され、アニミズムやシャーマニズムのような自然崇拝から多神教、そして一神教へと進化したという宗教社会学の仮説にもとづく。

英国の社会人類学者、ジェームズ・フレイザー(Sir James George Frazer:1854年-1941年)は、シャーマンを、霊媒(medium)、予言者(prophet)、見者(seer)、呪師(sorcerer)と分類。日本の宗教人類学者、佐々木 宏幹(ささき こうかん:1930年- )は、脱魂型、精霊統御者型、霊媒型・憑霊型、予言者型・霊感型、見者型の5つに分類する。予言者型・霊感型と見者型は、神霊・精霊と直接交信し、その意思を三人称で語る。

日本のシャーマン

日本においても、元来、神と人とのつながりを端的に表わしたものが「まつり」であり、まつりの語源が待つ(招待)や、まつらふ(仕える)に由来するとの説が有力。古来「巫女(Priestess)」と呼ばれる職能者は、いわば日本のシャーマンで、諸領域で活躍したことはよく知られ、いわゆる「魏志倭人伝」に記述された邪馬台国女王の卑弥呼が用いたという「鬼道」もシャーマニズム例として挙げられている説もある。

スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」には、オクサレ様、ハク(ニギハヤミコハクヌシ)、おしらさま、おなま様、牛鬼、春日様など、多くの神様が登場し、油屋は神様たちの憩いの場として描かれる。

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